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2023.11.11

受験で避けたい重い生理 「中学生のピル服用」医師の見解は

 中学受験、高校受験、大学受験。人生の節目には、誰だって万全の体調で臨みたい。

 だが、月経(生理)痛や「月経前症候群」(PMS)に悩む女性は少なくない。生理周期をコントロールしたり痛みを和らげたりする方法として有効なのは「ピル(経口避妊薬)」だが、子どもの服用には抵抗感を示す声もある。初潮を迎えたばかりや月経周期が安定しない小中高生がピルを飲んでも問題はないのだろうか。【菅野蘭】

ピルは処方箋が必要

 ピルは、月経周期に合わせて体内で自然に分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモンの2種類が配合されている錠剤で、経口避妊薬を指す。

 日本では1999年に承認され、医師の処方箋が必要だ。成分が含まれている量によって「中用量ピル」や「低用量ピル」などと呼ばれる。当初は避妊薬として保険適用外だったが、2008年に一部、生理痛が重い「月経困難症」などの治療薬として保険適用された。

 SNSで性教育や体の悩みについて情報発信する産婦人科医の高橋怜奈医師(39)は生理に悩む女性に、ピルの服用を推奨している。「保険適用になったのは、比較的最近なので、『避妊薬』のイメージが強い人もいます。保護者には必要ないと思っている人も多いですが、治療で服用した方がいい場合は『避妊薬ではなくて月経困難症の治療薬』と紹介しています」

 生理前の体の不調や肌荒れ、イライラなど精神的・身体的症状が始まるPMSから生理痛に加え、受験日は経血が漏れて服や椅子を汚していないかとソワソワすることもある。受験に臨む準備の一つに、「ピルの服用」は有効な手段なのか。

生理日「ずらせる」が、デメリットも

 試験直前でも、中用量のピルなら生理のタイミングをずらせる。高橋医師は「二つの選択肢があります」と説明する。後述するが、デメリットもある。

 一つ目は、生理予定日の5日前からピルを毎日服用し、受験後など生理がきても支障がない日まで飲み続ける。ただし、中用量ピルは、吐き気などの副作用も出やすい。「試験直前や場合によっては当日も服薬する必要があるので、副作用で試験に集中できなくなる懸念は残ります」

 二つ目は、前月の生理が始まって5日目から飲み始める。服薬を止めると3日後ぐらいに生理が始まる作用があり、生理を予定日より早められる。ただ、月経周期が安定していない場合は、確実に生理を避けられない可能性もあり、不安要素はある。

 高橋医師は言う。「初めてピルを服用する人や、月経周期が安定していない人には、これらの方法はお勧めしていません」

 そこで、十分な準備期間を設けることを提案する。

副作用の少ない方法は

 受験日までに時間的な余裕がある場合、選択肢に加わるのが「低用量ピル」だ。

 ピルの種類によるが、継続服用することで月経周期をコントロールし、PMSの症状改善や月経困難症の治療といった効果を期待できる。月経移動に使用する中用量ピルよりもホルモン量が少ないので、副作用も少ない場合が多い。

 高橋医師は「受験前にかかわらず、普段から生理痛に悩んでいる人は、服薬したほうが勉強のパフォーマンスも上がると思います」と話す。

 一般的な低用量ピルは、1日1回の服薬を続け、その後休薬して、出血を起こすというサイクルを繰り返す。一方、ヘビースモーカーなど血栓症のリスクが高い人は原則、服用できない。

 この他、女性ホルモンの「エストロゲン」を含まない黄体ホルモンだけの薬剤もある。

 この錠剤は血栓症のリスクが上がらず、服薬を続ける限り、生理を止められる。ただ、薬剤によっては1日2回の服薬が必要で、飲み始めは不正出血が起こりやすい傾向もある。いずれのピルにも共通し、高橋医師はこう注意喚起する。

 「どの薬も飲み始めは吐き気や不正出血などの副作用があることも考えられます。受験を意識して服薬を始めるなら、体質に合っているかを確かめるためにも、5~6カ月前からの服薬を勧めています」

何歳から服用できる?

 そもそもピルは、10代でも問題なく服用できるのだろうか。高橋医師は「世界保健機関(WHO)では、初経から服用できるとしています。私は、全く問題ないと考えています」と言う。

 ただし、医療関係者向けの日本のピル添付文書には、エストロゲンを含むピルは、骨成長(骨が大きくなり、身長が伸びる)が終了していない可能性がある患者への投与は禁忌となっている。日本産科婦人科学会、日本女性医学学会が発行する「OC・LEPガイドライン2020年度版」は、「初経後から服用できるが骨成長、骨密度への影響を考慮する必要がある」としている。

 高橋医師は「受験生や家族が不安に思う場合や10代前半の子どもには、黄体ホルモンだけのピルを処方しています」と説明する。

生理「困っている」時点で治療対象

 ただ、保護者世代では、ピルに加え、薬に対しても抵抗感を持つ人は少なくない。

 米国で1960年に認可された高用量ピルは吐き気や体のだるさなどを伴い、ピルに対して副作用が強いイメージが広がった。「避妊のためだけ」という印象は今も根深い。

 高橋医師によると、生理痛を抑える鎮痛剤に対しても「常用していると効かなくなるのでは」という不安から、子どもに服用を控えさせる人もいるという。だが、こう指摘する。

 「痛みが強くなってから薬を飲むと期待できる効果が薄い場合があります。また、我慢しているほうが、痛みの閾値(いきち)が変化し、痛みにより敏感になるというデータもあります」

 早めの服用を呼びかけるとともに、高橋医師は「思春期で月経困難症を患う人の3分の2は、腹腔(ふくくう)内に子宮内膜症が認められたという報告もあります。月経痛を痛み止めだけでやり過ごしているうちに、病状がひどくなることもあります」と説明し、「痛い、困っているという時点で治療対象です」と訴えている。

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