ソーシャルアクションラボ

2023.11.11

稼働停止から25年 ごみの最終処分場に帰ってきた生き物たち

 夕日を浴びて黄金色に染まるススキが冷たい風にさらさらと揺れる。1羽のホオジロが「チチッチチッ」とさえずりながら目の前を横切った。穂の間を器用に飛び移り、一瞬動きを止めて周囲を見渡すと、鳴き声を残してどこかへ飛び去っていった。

 東京都日の出町の山あいにあるススキ原はかつてごみが埋め立てられた谷戸沢(やとざわ)廃棄物広域処分場だ。1984年から約14年間、八王子市や立川市など多摩地域26市町の家庭ごみが集められ、最終処分場として約260万立方メートルが埋められた。

 98年に役割を終え、処分場を管理していた「東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合」(現東京たま広域資源循環組合)が自然環境の再生を目指した保全活動を続けている。

 処分場ができる前、ここはシジュウカラなどの小鳥やタヌキなど多様な生き物が生息する森林だった。組合は生態系を取り戻すため、約45ヘクタールの敷地のうち埋め立てでできた約22ヘクタールの草地に清流復活用貯水池やビオトープを整え、生態モニタリング調査を継続しながら回復を待った。

 稼働停止から25年がたった現在、処分場内には約1500種の動植物が生息する。水辺には初夏、ヘイケボタルやゲンジボタルが淡い光を放ち揺らめく。周囲では都のレッドリストに掲載されているシュレーゲルアオガエルやモリアオガエルが鳴き声を響かせていた。

 環境省のレッドリストで「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されているトウキョウサンショウウオの産卵も確認された。敷地外の森では密猟などで数を減らしているが、自由に立ち入れない処分場内では産卵数が増加しているという。

 2010年からは、フクロウ用の巣箱を設置し、16年にはひなが巣立った。繁殖期以外にはムササビが利用する姿も観察されている。同循環組合の関谷貴浩さん(33)は「生態系ピラミッドの頂点に位置するフクロウの営巣でも分かるように、自然環境の再生が順調に進んでいる」と話す。

 建設反対運動や、汚水流出をめぐる係争が長く続いた処分場。周辺環境への影響監視と、生態系再生への取り組みが同時並行で続く。

【写真・文 宮武祐希】

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