ソーシャルアクションラボ

2023.11.16

循環型ビジネスでより「おいしく」 商業施設の生ごみ、米作りに活用

 国内で年間523万トン(2021年度)の食品ロスが発生する中、商業施設「GOOD NATURE STATION(グッドネイチャーステーション)」(京都市下京区)が滋賀県の農家などと協力し、施設から出る生ごみから作った堆肥(たいひ)で米を栽培し、再び施設で販売する循環型のビジネスに取り組んでいる。【水谷怜央那】

 施設にはレストランやホテルなどが入っている。2019年、生ごみを微生物の作用で分解するコンポストを施設内に設置し、堆肥化を始めた。この堆肥で米を生産するのは、滋賀県近江八幡市の農園「近江園田ふぁーむ」。農園の園田耕一会長は18年前から食品残さから作った堆肥を使っており、食品リサイクルに取り組む団体の仲介で協力することになった。

 21年に初めて生ごみ由来の堆肥で米を栽培し、収穫は今年で3回目になる。年間に出る生ごみの量は、趣旨に賛同する他施設分も含めて4・5トン。ごみによって水分や油分の量などが異なるため、米ぬかなどを混ぜて成分を調整し、9~13トンの肥料ができた。田約60~80反(約600~800アール)分という。

 園田会長は「コンポストの堆肥は豊富な成分を含み、それが米の味に表れている。米のおいしさを示す食味値は平均を大きく上回る」と胸を張る。

 栽培した米は施設1階のショップやオンラインストアで2キロ1000円前後で販売。施設内の「エルタン レストラン」ではメニューで提供している。

 一方、生ごみゆえの課題もある。誤って茶わんのかけらやフォークが入っている場合があり、園田会長は「混ざらないように呼びかけている」と語る。食品残さでもさざえやたけのこの皮は分解できない。ファストフード店などから出る生ごみは油分が多く不向き。分別など店側の協力は不可欠だ。

 施設運営会社「ビオスタイル」の嶋田真弓マネジャーは「テナントの了解を得られず断念したと他施設から聞くケースが多い」と言い、模索は続く。それでも、施設や農園には多くの国内外の団体が視察に訪れている。

 園田会長は「離農者から預かった農地で循環型農業をしている。できた米を農地の持ち主に食べてもらうと『わしが作っていた米よりうまい』と言ってもらえた」と笑顔を見せた。

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