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2023.11.29

COP28、海の問題焦点に 日本の研究機関「漁場の危機」発信へ

 30日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開幕する国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で海の問題が焦点の一つとなる。海水温の上昇など気候変動が海に与える影響への対応は急務となっており、会場では各国の研究機関などが海の現状について報告し、日本の研究機関はアジアの漁場の危機を取り上げる予定だ。

 COP28の会場には海洋をテーマにした「オーシャンパビリオン」が設置される。米ウッズホール海洋研究所など34の研究機関・団体が参加し、専門家らを招いたパネルディスカッションや講演会を予定している。

 オーシャンパビリオンは昨年11月にエジプトで開かれたCOP27で初めて設置され、20団体が参加。会場には英国のジョンソン元首相、フランスのマクロン大統領ら政府要人や各国の王室関係者が訪れるなど、海の問題への関心の高さを印象づけた。

 COP27に続き参加する笹川平和財団海洋政策研究所は12月2、4両日、気候変動による漁場の変化や民間の役割などをテーマにしたシンポジウムを開催する。海洋環境の変化が海の生態系にとって脅威となっていると提起するなど、アジアの海洋の現状を世界に発信したい考えだ。海洋などの問題はCOP28のテーマ別会合でも9日に議論される。

 同研究所などによると、太平洋の多くの海域で過去30年で漁獲量が減少。昨年の日本の漁業・養殖業生産量は385万8600トンで、この30年で半分以下になった。要因の一つとして海水温の上昇による漁場の変化が指摘され、上昇が続けば今後も減少が続く可能性があるという。同研究所の阪口秀所長は「乱獲とのダブルパンチでアジアの漁場は回復できない状況となっている」と危機感をあらわにし、「温室効果ガスの排出抑制によって海水温の上昇を抑えることが重要だ」と話す。

 国境をまたぐ海の問題はアジア太平洋にとどまらず世界共通の課題となっている。ノルウェーが主導し、日本やパラオなど14の海洋国家が2018年に「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」の初会合を開催。漁業資源を30年までに持続可能な水準にまで回復させることや、海洋汚染の減少など14分野の達成を目指している。今年9月に米ニューヨークで開かれた第5回会合には上川陽子外相が参加した。

 一方、日本政府の関心の低さを指摘する声もある。日本財団は4月、漁業や海運など海に関連する日本の「海のGDP(国内総生産)」が9兆1988億円でGDPの1・7%を占めるとの海洋産業規模調査結果を公表。50年には海のGDPは12兆~16兆円台に上るとの推計値も示した。日本は領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積が約447万平方キロメートルで、世界第6位の海洋大国だが、阪口所長は「政府の関心はまだまだ低い」と指摘した上で、「海の問題で日本がリーダーシップを果たしてほしい」と期待を込める。【岡村崇】

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