2023.12.12
欧米・島しょ国vs産油国 化石燃料廃止巡り深夜の攻防 COP28
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で11日夕に公表された成果文書の新草案には、化石燃料の削減方針が明記されたが、当初案の「段階的廃止」から後退した。欧米や島しょ国などはより強い表現を求めて連帯し、産油国などとの間で最終盤の攻防が続いた。
「私たちの『死亡診断書』には署名できない」。気候変動に最も脆弱(ぜいじゃく)な島国で構成する「小島しょ国連合」(AOSIS)は11日夜に発表した共同声明で、新草案に反対する姿勢を明確にした。化石燃料の「段階的廃止」への約束が盛り込まれていないことや、取り組みの自主性を強調する文言を問題視。米国のケリー大統領特使(気候変動問題担当)も「化石燃料を含む緩和についての内容は、大幅に強化する必要がある」と厳しい評価を下した。
各国の閣僚や交渉官らは会議室に集まり、11日夜から未明まで新草案について協議を続けた。COP28のジャベル議長は協議開始後1時間程度で険しい顔で会議室を後にし、報道陣の呼びかけにも応じなかった。ドイツのベーアボック外相は、同国をはじめとする欧州の交渉団は「もう少し滞在する用意もある」とも述べ、12日までと予定されている会期に関係なく交渉を続ける意向を示した。
会議室の前には、COP28にオブザーバーとして参加する環境団体などに所属する若者約100人が集結。手をとりあって「人間の鎖」を作り、野心的な内容の合意を求めて交渉官らに無言の圧力をかけた。参加したドイツの大学院生、ロマン・シエラーさん(28)は「交渉官たちにもう少し頑張るよう促したい」と語り、軌道修正を訴えた。
「段階的廃止」の削除はサウジアラビアやイラクなど産油国の強い意向が反映された形だ。ロイター通信によると、クウェートのバラク石油相は11日、「段階的廃止」の明記を求める欧米に反対する姿勢を強調した。石油輸出国機構(OPEC)は、化石燃料の生産と消費に影響を与える合意を阻止するよう加盟国などに働きかけ続けた。中国やインドなどの大国も「段階的廃止」の明記には消極的で、妥協点は見いだせていない。【ドバイ岡田英、八田浩輔】
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