ソーシャルアクションラボ

2023.12.16

あふれかえる海洋プラごみ 独特の色合いを持つアクセサリーに

 青く美しい日本海が広がる金沢市の海岸だが、砂浜には多くのごみが海流によって流れ着いていた。「拾っても拾ってもなくならないけど、少しずつね」。ボランティアの仲間とともに同市の「カエルデザイン合同会社」のデザイナー、川﨑朱美子(すみこ)さん(53)は汗をぬぐいながら海岸の清掃活動をする。

「どんどん作ってどんどん売る。買って、いらなくなったら捨てる。もうそんな時代じゃない。環境、福祉、何か世の中に還元できるモノを」。川﨑さんは考える。同社では、海洋プラスチックごみを材料に、障害のある人たちと協力してアクセサリーを制作している。

 2019年に、デザインの仕事で知り合った高柳豊さん、井上和真さんと3人でカエルデザインを始めた。障害者就労支援施設と共同で何かできないかと試行錯誤し、海洋プラごみのアクセサリーを作ることになった。川﨑さんが海岸で清掃活動に参加した時に集めたプラごみの色合いが「意外とかわいい」と思ったのがきっかけに。会社名の「カエル」には海洋プラごみをアクセサリーへ「カエル」、海の環境や社会の環境、障害を持つ人たちの現状を良い方向へ「カエル」との思いが込められている。

 新型コロナウイルス流行前は、障害者就労支援施設に通所する人たちと一緒に海岸でプラごみを集めていたが、現在は地元有志のボランティアと清掃活動をし、全国のビーチクリーン団体などからも材料が送られてくる。

 アクセサリーの制作は石川県内4カ所の障害者就労支援施設が担っている。集めたプラごみを重曹で洗浄、色分けして、家庭用アイロンで溶かして板状にする。ハサミで切り、レジン(合成樹脂)でコーティングして金具を付けると完成。プラスチックの色合いや熱での溶け方などが一つ一つ違うのがこのアクセサリーの魅力だ。金沢市の障害福祉サービス事業所「鳴和(なるわ)の里」の藤谷幸造施設長(69)は「単純作業ではなく、創作する要素があるので達成感があるのでは。通所者にとって、金銭面だけではないやりがいのある仕事です」と話す。

 川﨑さんは海洋プラごみの問題について石川県内外の学校、企業での講演活動にも取り組んでいる。10月14日には、同志社中学校(京都市左京区)で出前授業を行った。参加した3年生の岡崎美玖(みく)さん(15)は「ごみから作ったとは思えないほどきれいなアクセサリーだった。環境問題について、自分でも何かできれば」と授業の感想を話した。川﨑さんは、少しずつ社会を「カエル」ことができればと思っている。「カエルデザインのアクセサリーを通して、多くの人に海洋汚染の問題、障害者の就労環境について知って、考えてほしい」【長谷川直亮】

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