ソーシャルアクションラボ

2023.12.18

障害児の「きょうだい」の悩みとは ヤングケアラーのリスクも

 身体や知的、精神の障害などがある兄弟姉妹を持つ人たちを「きょうだい」と呼び、その声に耳を傾けようとする動きが生まれつつある。きょうだいが抱える特有の悩みや思いはどういったものなのだろうか。

 きょうだいらの支援に取り組む「きょうだい児と家族の応援団にじいろもびーる」(東京都)の有馬桃子代表は約10年前に知的障害のある妹を亡くした。「家族の中心だった妹は私にとって、守るべき人で重みのある存在だった」。10月に滋賀県で開かれた、きょうだいをテーマにしたパネルディスカッションに登壇した有馬代表はそう振り返った。

 一方で、きょうだいの多くが子供のころに抱える悩みとして、将来は両親に代わって兄弟の面倒を見ないといけないのではないかという漠然とした不安▽友達に兄弟のことを話しづらいという気持ち▽兄弟や親の分も自分が頑張らないといけないという義務感――があると解説。大人になると自分の就職や結婚と兄弟の障害との間での葛藤や、両親が他界した後の兄弟の将来への焦りなどがあるという。「きょうだいは一人一人違う。決めつけるのではなく、その子の思いを想像して『あなたは大切な存在』、『1人じゃない』と伝えてほしい」と有馬代表は呼び掛けた。

 知的障害者の家族らで作る「全国手をつなぐ育成会連合会」の又村あおい事務局長は「子供の頃からきょうだいが介助や介護を手伝うのは当然という発想が強いと、ヤングケアラーになってしまうリスクがある」と指摘する。

 滋賀県と県社会福祉協議会が2021年、初めて実施したヤングケアラーの実態調査では、県内の小中高331校が回答。ヤングケアラーの児童・生徒数は590人に上り、ケアをしている対象は「兄弟姉妹」が59・4%と最も多かった。県はこうした状況を受けて「ヤングケアラー支援体制強化事業」を22年から開始し、NPO法人に事業を委託している。【飯塚りりん】

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