ソーシャルアクションラボ

2023.12.31

太陽熱活用、環境・財布に優しい農業 ベテラン6人が立ち上げ

 茨城県下妻市黒駒に、夜間も太陽熱を活用してビニールハウスを温める、環境にも財布にも優しい農業を始めたベテラン6人がいる。使用する重油量を減らせるシステムを自分たちで作り、11月中旬から稼働を始めた。考案した塚田猛さん(72)は「どうすれば経費を抑えて高齢者の活躍の場ができるかを考えた。年金受給者が働ける道具を作りたかった」と笑う。

 メンバーは専業や兼業農家を経験してきた60代後半~70代の男性。英語で「熟練技術者」を表す「Skilled Person(スキッパー)集団」と名乗る。塚田さんによると、市内の施設園芸農家では重油代が10アールで年間100万~150万円ほどかかり、売り上げの2~3割が重油代に消えている。燃料費高騰もある中で、重油使用量を減らして気軽に農業に取り組めるようにと立ち上がった。

 7アールほどの敷地にハウス2棟を設置し、バナナやマンゴーなどのトロピカルフルーツやキノコを育てる。3年後には耕作放棄地などを活用して4倍に拡大する計画だ。一緒に活動する人も募集しており、塚田さんは「技術を持つ人にも活躍してほしいし、教えたら技術は身につくので新規就農を目指す人の支援もしたい」と話す。

 システムはこうだ。太陽熱パネル3枚を屋外に設置し、寒くても凍らない特殊な液体を温める。更にその液体を水500リットルが入ったタンク内の銅管に流し、晴れた日には2時間でタンク内の水温を60~70度まで上げられるという。夜間などに気温が下がると温水に送風機を当てて温風をハウス内に行き渡らせて保温する。水温が下がったらボイラーも併用するが、燃料費を約65%削減できるとしている。

 システムは塚田さんが考え、メンバーの横島基義さん(75)が経営する横島精密(下妻市)が特許を申請している。

 今のところ夜間はタイマーで30分ごとにシステムを動かしたり止めたりしているが、1月をめどに温度センサーを付けてアプリで自動制御できるようにするという。夏にはシステムを止めてキュウリ、トマト、ナスなどの夏野菜を育てる計画を立てている。塚田さんは「将来は直売所を作って、店頭に立ち、皆さんに楽しんでもらえる場にしたい」と地域の交流の場にする構想も披露した。【信田真由美】

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