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2024.01.05

「不安感じるのは正常な反応」 避難生活での災害ストレスに注意

 能登半島地震によって自宅が被害を受け、避難生活を始めた被災者は石川県内だけでも3万3000人以上に上る。避難の長期化が懸念される中、被災したショックや慣れない避難所生活から生じる「災害ストレス」が精神疾患につながることが過去の災害から分かっている。専門家は「不安を感じるのは正常な反応。頑張りすぎず異変を感じたらすぐに相談を」と呼びかけている。

 被災者の心のケアに詳しい黒木俊秀・九州大教授(精神医学)によると、被災者の心理状態の変化は、数日間~数週間の「ぼうぜん自失期」を経て、数カ月後は「頑張らなければいけない」と考えて被災者同士で強い連帯感を持つ「ハネムーン期」に入る。その後、自分が置かれた状況への不満が噴き出す「幻滅期」に入り、日常が戻り始める「再建期」に進んでいく。

 災害ストレスによる精神的影響には個人差があるが、一般的に地震などの災害発生から数日間は不眠や不安、緊張などの急性ストレス反応が心配される。

 黒木教授は「命の危険に直面し、余震に過剰な反応をしてしまうなどの緊張状態が続くのは正常な反応だ」と指摘。食欲不振や不眠、集中力の欠如がある場合は精神的な影響が出ている可能性があるという。子どもは、落ち着かなくなる、赤ちゃん返りをする、いらついて攻撃的になるなどの影響が出ることがあり、黒木教授は「異常を感じた場合は避難所を巡回している医療チームに気軽に相談してほしい」と呼びかけている。

 中長期的には、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する人もいる。「災害の全貌がはっきりせず、被災者にとっては避難生活がいつまで続くのか見通せない厳しい状況。被災者の心のケアは今後必要になってくる」と話す。【鳥井真平】

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