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2024.01.07

石川県213カ所に「自主避難所」 行政支援届かず 能登半島地震

 能登半島で最大震度7を観測した地震で、石川県内の15市町で約3万人が避難生活を強いられている。このうち大きな被害が出た輪島市や珠洲(すず)市、能登町では、被災者が身近な場所で身を寄せ合う「自主避難所」が少なくとも213カ所で確認されていることが判明。年末年始に帰省中だった家族連れらも被災し、自治体が指定する避難所が想定を超える人であふれていることが要因の一つになっている。

 地震は8日で発生から1週間。自主避難所は過酷な生活環境に伴う健康被害などが懸念されるが、行政の支援は十分に行き届いていない。

 自治体が災害対策基本法に基づき公民館や学校などに設置する指定避難所は支援物資が集まりやすく、給水拠点や救護所にもなる。一方、自主避難所では被災者らが食料や物資を調達することが多く、安全の確保も十分とは言えない。

 石川県などによると、県内では7日現在、15市町で約400カ所の避難所があり、2万8821人が厳しい環境での生活を余儀なくされている。被災地では8日にかけて大雪も予想されている。

 毎日新聞が輪島、珠洲、能登の3市町を取材したところ、計290カ所の避難所のうち指定避難所は77カ所で、残る213カ所は被災者らがビニールハウスや民家、寺院などに設置する自主的な避難拠点だった。各自治体は各拠点からの連絡で初めて把握できるが、申告がない同種避難所は他にも存在している可能性が高い。

 約1万2000人が避難を続ける輪島市。市によると、古里に帰省中の人や観光客も被災し、指定避難所の多くで収容人数を上回ったほか、一部は建物の損壊で受け入れが不可能に。こうした事情から自主避難所が次々に設けられ、126カ所で確認されている。

 能登町は町内にある76カ所の避難所のうち、自主避難所は54カ所に上っている。各地で道路が寸断し、指定避難所にたどり着けないことが主な要因だという。

 ある自治体の担当者は「全ての避難所に食料や物資をくまなく届けたいが、指定避難所の物品調達すら難しい。人手が全く足りない」と頭を抱えた。

 岸田文雄首相は6日の非常災害対策本部会議で、ホテルや旅館の空き室を自治体が借り上げる「みなし避難所」を積極的に活用し、被災者の生活を改善するよう指示した。【二村祐士朗、藤河匠】

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