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2024.02.03

球泉洞駅駅舎、倒壊危機で解体へ 管理者2人、九州豪雨で犠牲に

 2020年7月の九州豪雨で被災したJR肥薩線の球泉洞駅(熊本県球磨村)の駅舎が解体される。駅舎とホームの一部のみが残っていたが、被災から3年半が経過して駅舎倒壊の危険性が高まっていたため、JR九州が決めた。2月上旬に工事を開始。3月中に完了する見通し。【城島勇人】

 球泉洞駅は、球磨村にある九州最大の鍾乳洞「球泉洞」の最寄り駅。木材をふんだんに使ったレトロな駅舎で九州豪雨の前は、球泉洞を訪れた観光客が数多く利用していた。駅前にあった商店の店主、川口豊美さん(当時73歳)が名誉駅長を務め、姉の牛嶋満子さん(同78歳)とともに駅を管理していたが、2人は豪雨で犠牲になった。駅舎も球磨川の氾濫で壁が流れ、ホームの一部も流失し無残な姿となった。

 一方、豪雨で橋や線路などが流失した肥薩線は、八代(同県八代市)―吉松(鹿児島県湧水町)間の86・8キロが不通になったまま。約235億円に上る巨額の復旧費と維持費がネックとなり復旧のめどは立たない。今も川口さんが手入れしていたアジサイの木が残るなど観光客を迎えた頃の趣を残す球泉洞駅だが、度重なる風雨で腐敗。残る部分の劣化が急激に進んでいる。

 川口さんの長女、平野みきさん(52)は1月下旬に解体前の駅舎を訪ねた。今も母親が利用客を出迎え、通過する列車に笑顔で手振っていた姿を思い出すという。「解体は仕方ないが、駅舎がなくなるのはさみしい。肥薩線の復旧が決まっていれば新しい駅舎の完成を待つ楽しみがあるのだけれども」と話した。

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