2024.03.12
男性育休「取得率100%超」に 2年で10倍の変化生んだ地銀の方策
2020年に11%だった男性の育児休業取得率が、22年には106%――。第四北越銀行(新潟市)のケースだ。約10倍もの変化だが、何が変わったのか。【池田真由香】
「女性職員は55%と半数以上を占めており、女性活躍推進は会社運営・経営戦略において重要な要素の一つ」と同行人事部の担当者は話す。男性の育休取得を促進することで、女性が長く働ける環境整備や、男女間の育児や家事分担の偏りの是正を図る。
取得率アップの方策として、具体的には、21年から子供が生まれる予定の男性社員に制度を周知し育休取得を勧めるようにしたほか、管理職向けのセミナーを開催するなど取り組みを強化。男性の育休取得率は20年は11%▽21年は48%▽22年が106%と短期間で向上した。前年度に子どもが生まれ翌年度に取得するケースがあったため22年は100%を超えたという。人事部の担当者は「取り組みの本格化で、実績が改善した」と話す。職員の働きがいの向上や生産性向上という効果もあるという。
女性活躍に力を入れる背景には、対外的な狙いもある。女性活躍や男性の育休といったダイバーシティー(多様性)経営は、「取引先や株主、投資家などへの会社イメージのアップにつながる」と担当者は話す。また学生やその保護者に向けても働きやすい環境をアピールでき、優秀な若手人材の確保という効果もあるという。
一方で、女性の管理職比率や男女間の賃金格差などは改善に向けた取り組みの最中だ。
同行の22年度の有価証券報告書によると、女性活躍推進法に基づく男女間の賃金差は、男性を100%とした場合に女性は全労働者で45・8%、正社員で61・2%、非正規労働者で66・5%と開きがある。背景について同行は「賃金が相対的に低い有期雇用従業員で、女性が83・4%を占めていることが大きい」と説明する。
管理職における性別の偏りも影響している。給与の比較的高い管理職では、男性が74・2%。一方で、引っ越しを伴う転勤がない「地域限定制度」では、利用者の8割以上が女性だ。同制度を選択すると年収が10~15%程度下がるという。これらが格差の要因となっていると分析する。
同行は「人事制度や賃金体系において男女の賃金差はなく、職員一人一人の生活スタイルに応じた多様な働き方を支援する取り組みを進めてきた結果」と捉えつつも、育児・介護が落ち着いたタイミングでのフルタイム勤務への転換促進や、有期雇用従業員の正社員転換の促進を目指していく予定だ。
女性の管理職の比率は22年度で25・8%。東京証券取引所は東証の最上位「プライム」上場企業の役員について、30年までに女性比率を30%以上とするよう求めている。
同行は「社会的要請も高まっており、これまで以上に女性の活躍を推進する実効性ある施策に取り組む」としている。21年度には公募型の「女性活躍推進プログラム」を新設。研修やメンター制度などでリーダーに求められる意識や知識、スキルの相互研さんを図り、キャリア形成の支援を行う。担当者は「ライフステージの変化に応じた働き方を促し、柔軟にキャリア形成支援を行っていきたい」と話した。
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