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2024.03.13

JR肥薩線、復旧へ最終調整 20年九州豪雨で一部区間不通続く

 2020年7月の九州豪雨で被災し一部区間で不通が続くJR肥薩線について、熊本県とJR九州が、鉄道復旧を前提として県が沿線自治体と取りまとめた復興方針案での基本合意に向けて最終調整に入っていることが関係者への取材で判明した。3月下旬にも国を交えた検討会議が開かれる見通しで、日常利用の創出など残された課題について詰めの協議が続いている。

 肥薩線の復旧を巡っては、22年3月から国、熊本県、JR九州の3者で24年2月までに計6回の検討会議を開催。県は23年12月の検討会議で、約235億円に上る復旧費について、JR九州の負担を減らすため国の支援策を活用したうえで地元の負担割合を取りまとめ、33年度までに八代(熊本県八代市)―人吉(同県人吉市)間の復旧を目指す復興方針案を提示した。

 当初、「多額の公金で復旧させたとしても、赤字路線で持続可能性に疑問がある」と復旧に難色を示していたJR九州だったが、この検討会議後に開かれた23年12月の定例記者会見で古宮洋二社長は「県や沿線自治体が総力を挙げてまとめた復興方針案を重く受け止める」と表明していた。

 その後、日常利用を中心とした持続可能性の議論に軸足を移し、24年2月に開かれた検討会議でJR九州側は「(復興方針案は)観光に軸足を置いている。日常利用と2本柱で検討してほしい」と求めていた。

 13日に記者団の取材に応じた蒲島郁夫知事は「これまで通り(4月15日までの)任期中にめどをつけるため、合意に向けて全力を尽くす」と述べるにとどめた。

 肥薩線は豪雨後、八代―吉松(鹿児島県湧水町)間86・8キロで不通が続いている。県と沿線12市町村は23年11月、約235億円とされる復旧費の負担割合を、国約197億円▽県約12・7億円▽JR九州約25・3億円――とし、線路などの維持費については県と沿線自治体が負担する「上下分離方式」を導入することで合意している。【下原知広、山口桂子】

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