2024.03.14
「差別に気付かないことが罪」同性婚訴訟を応援する元最高裁判事
同性婚が認められない現状を変えようと、元最高裁判事で弁護士の山浦善樹さん(77)が発信を始めている。判事時代、夫婦別姓を認めない民法の規定を違憲とし、法改正に動かない国会の怠慢を批判した山浦さん。「差別している側は差別だと気づかない。それ自体が罪だ」と自戒を込めて語る。
「このままではいけない」マチ弁の気付き
山浦さんは1974年に弁護士登録。大規模なローファームではなく、街角の小さな事務所で市井の人々に寄り添う「マチ弁」を続けてきた。2012~16年に最高裁判事を務め、再び弁護士活動をしている。東京都内の事務所を訪れると、危機感を訴えた。
「合理的な理由もなく結婚を認めてもらえず、声を上げている当事者がいる。海外ではどんどん同性婚が認められてきているのに、日本の国会は動かない。このままでは後世の笑いものになる」
ただ、自身もそうした思いに至ったのはごく最近だという。
23年12月、知り合いの出版関係者から「同性婚訴訟のイベントに出ないか」と声をかけられた。それをきっかけに、同性カップルの現状を取り上げたテレビのドキュメンタリー番組を見たり、関連資料を読んだりした。
自分の性は何なのか。うまく説明できず、誰にも相談できずに苦しんできた人たちが紹介されていた。
「男性か女性か、それが全てだと思っていた。このままではいけない」。山浦さんは自らを恥じ、性自認に関する勉強を重ねた。
夫婦別姓訴訟で国の責任を指摘
法曹として、個人の尊厳を大切にする姿勢は一貫している。
最高裁判事だった15年、夫婦別姓を認めない民法の規定が合憲か違憲かが問われた上告審に臨んだ。
規定を合憲とした10人の多数意見に対し、5人が違憲と判断。山浦さんは「夫婦間の実質的な平等の点で問題がある」と指摘し、5人の中でも唯一、法改正を怠った国の賠償責任も認めるべきだと述べた。
同性婚を認めない現行制度が違憲か合憲かが争われた訴訟は全国5地裁に起こされ、1審判決で「合憲」としたのは大阪地裁のみ。他の4地裁は「違憲」や「違憲状態」とし、3月14日には2審の初判断となる札幌高裁判決がある。
主な争点は憲法が定める「婚姻の自由」や「法の下の平等」に反するか否かだが、山浦さんは少なくとも「法の下の平等」に反するとみている。
今後の見通しについて「直接訴訟に関わっていないので予想は難しい」としつつ、自分より若い裁判官たちの感性に期待している。「今、変わらないとだめだ。諸外国に比べて、既に日本は遅れているのだから」【平塚雄太】
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