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2024.03.14

「あとは国会」法改正強く望む 同性婚訴訟、札幌の原告カップル

 同性婚を認めていない現行制度の違憲性が問われた訴訟で、14日の札幌高裁判決は2審として初めて違憲判断を示した。「思いに正面から応えてくれた。待ちに待った判決だ」。原告らは、1審の札幌地裁からさらに踏み込んだ内容の判決を歓迎するとともに、「あとは国会。明日にでも結婚できるようになってほしい」と法改正を強く望んだ。

 午後3時過ぎ、札幌高裁802号法廷。「憲法24条1項、2項と憲法14条に反する」。現行制度が違憲だと告げる判決を聞きながら、原告の中谷衣里(なかやえり)さん(32)とパートナーのちえさん(仮名、30代)は涙を拭った。

 中谷さんは「婚姻は両性の合意のみに基づく」とする憲法24条1項について「『両性は男女間だ』と指摘する判決を聞く度に、私や周りの同性カップルが、いないようにされていると毎回実感させられてきた」と振り返る。今回、6件の地裁判決も含めて、全国で初めて現行制度が24条1項に違反するとの判断が示され、「この国で家族として生きていっていいんだと、前向きになれた」と笑顔をみせた。

一斉提訴から5年、少しずつ理解広がる↵

 「裁判をやってくれて、ありがとうございます」。泣きながら伝えてくれたある女子高校生の姿を中谷さんは忘れられない。

 中谷さんは、NPO法人「L-Port」の代表として、性的少数者の子供たちの相談窓口を運営したり、講座を開いたりしている。2021年3月の札幌地裁判決後、この訴訟について話す機会があった。講演後、1人の女子高校生が中谷さんの元にやってきた。

 その高校生は以前、同性と付き合っていた。互いに好きで幸せだったが、「将来結婚できない」という事実が心に暗い影を落とした。「未来が見えず、悲しい」。結局、2人は別れたが、別れ方が心残りで苦しんでいた。

 だが、中谷さんらが結婚の自由を求めて裁判を闘い、実際に札幌地裁で違憲判決が出たことを知った。「社会は少しずつ変わっているんだ」と思うと、心に光が差したようだった。高校生は「次に付き合うことがあったら、悲観して別れることはないと思う」と涙を流したという。

 中谷さんはショックだった。「高校生の頃から、社会の制度で別れることを選ばせてしまう。こんな悲しい社会があってたまるか」。改めて活動に熱が入った。

 19年2月に中谷さんらが一斉提訴してから5年が過ぎた。札幌地裁判決に続くように名古屋地裁で「違憲」、東京(1次)、福岡、東京(2次)の各地裁で「違憲状態」との判断が示され、札幌高裁でも再び違憲とされた。この間、LGBTQなど性的少数者への理解も少しずつ広まってきている。

 その一方で、一緒に暮らすちえさんとの関係は「パートナーシップ宣誓制度」で自治体から公認を受けただけで、5年前から変わらない。異性同士の結婚で当たり前のように認められる権利も保障されていない。原告の中には、いまだに職場などでカミングアウトできない人たちもいる。

 中谷さんは「早く法律が変わってほしい」との思いを強める一方、札幌高裁の判決を「若い世代にとってポジティブなものになる」と受け止めている。「自由に結婚を選べる選択肢があると、将来に希望を持てる。立法府にプレッシャーを与えられる判決が出たことで、生きていけると思える性的少数者が一人でもいればうれしい」【後藤佳怜、片野裕之】

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