ソーシャルアクションラボ

2024.03.26

パートナー殺害「悲しみ、同性・異性で変わらぬ」 原告男性笑み

 悲しみは性別で変わらない――。犯罪被害者給付金の支給対象に事実婚状態の同性カップルも含まれるとの初判断を示した26日の最高裁判決は、同性パートナーを殺害された原告の思いをくみ取り、受給の門戸を広げた。弁護団は平等に重きを置いた判決の理念が他制度にも波及することを期待した。

 「同性パートナーを犯罪被害者遺族と認める」。判決言い渡しから約50分後、原告の内山靖英さん(49)=愛知県=は代理人弁護士とともに最高裁前で紙を掲げた。支援者らから「いい判決が出たよ」と声をかけられ、内山さんは照れくさそうにほほ笑んだ。

 内山さんがパートナーと出会ったのは約30年前。同居するようになり、生計を一つにした。「母が亡くなるまで3人で暮らし、母のことをいつも大切にしてくれた。当たり前のように(そばに)いてくれる人だった」と振り返る。

 パートナーは2014年、内山さんと共通の知人に刃物で刺され、52歳で亡くなった。知人は殺人罪で懲役14年の1審判決が16年に確定。内山さんは同年、愛知県公安委員会に犯罪被害者給付金を申請したが、同性カップルであることを理由に認められなかった。

 裁判で訴えたのは、犯罪被害の苦しみは、パートナーが同性か異性かで変わらない点だ。実名を出して活動することで支援者も増え、同性カップル全体の権利を守るための闘いに意味合いが変わっていった。

 「期待しては裏切られてきたが、ようやく安心できた」。事件のショックから内山さんは声が出づらくなり、判決後の記者会見では弁護士がコメントを代読した。堀江哲史弁護士は、同性カップルがさまざまな制度で不利益を受けているとし、「同性か異性かで区別する合理的理由がなければ保護の対象と解釈する余地ができた」と判決の意義を語った。【斎藤文太郎、田中理知、山田豊】

犯罪被害者給付金

 故意に生命・身体を害される犯罪に遭った人やその遺族を支援するため、国が1981年に始めた制度。「遺族給付金」、1カ月以上の療養などを必要とする被害者への「重傷病給付金」、身体や精神に障害を負った被害者への「障害給付金」の3種類がある。遺族や被害者本人の申請に基づき、都道府県公安委員会が支給・不支給を裁定する。警察庁によると、2022年度は支給が368人(総額約14億8400万円)、不支給が35人。同性カップルの遺族給付金の申請は統計を取っていない。

関連記事