2024.03.28
日本の火山防災の司令塔「火山本部」4月始動 観測・研究を一元化
火山の調査研究の司令塔を担う、国の火山調査研究推進本部(火山本部)が4月1日、文部科学省に設置された。地震は1995年の阪神大震災を機に地震本部ができたが、火山にはこうした組織がなく、研究者が手弁当で担ってきた。地震と火山を同等の組織にすることで、災害大国・日本の防災力を強化する。
日本には111の活火山がある。このうち50火山は、噴火の可能性が考えられ、気象庁の常時観測の対象だ。58人が死亡、5人が行方不明になった2014年の御嶽山(長野、岐阜両県)など、噴火による被害は後を絶たない。
ただ、噴火は地震に比べて頻度が少ない上、火山の研究者は「40人学級」とやゆされるほど少なく、観測や調査研究の体制の弱さが指摘されてきた。
現在は、研究者などでつくる気象庁長官の私的諮問機関「火山噴火予知連絡会」(噴火予知連)があるものの、国としてのルールや予算措置はない。大学や研究機関の研究者が個別に研究費を獲得して担ってきたのが実情だが、国立大の運営費交付金の減額などが響き、体制は先細りしている。
このため、火山の観測や調査研究を一元的に担う司令塔として、火山本部を設置することなどを定めた改正活火山法が昨年6月に成立した。
火山本部には地震本部と同様に、観測や調査の施策を立案する「政策委員会」と、調査結果を分析して評価する「火山調査委員会」を置く。各機関が個別に置いている観測網を、火山本部のもとで一元的に運用することも検討している。
火山調査委員長に就任した防災科学技術研究所の清水洋・火山研究推進センター長は「国が責任を持って観測網を維持することが大事だ。絵に描いた餅にしないためにも、現場の火山研究者の意見をくみ上げて、持続可能なシステムを作り上げてほしい」と話す。【山口智】
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