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2024.05.04

川の生態系保全に数値目標 国交省設定へ 湿地面積など定量化

 河川やその流域の生態系の保全・再生に向け、国土交通省は河川や各河川の区間単位で数値目標を設定する方針を固めた。指標は湿地の面積などが想定されている。治水に関しては堤防の高さなど定量的な目標を定めてきたが、環境面でも具体的な目標を示して対策を強化する。

 2022年の国連生物多様性条約第15回締約国会議では、30年までに生物多様性の損失を食い止め、回復に転じさせる「ネーチャーポジティブ(自然再興)」実現に向けた世界目標を採択した。民間企業も含め、世界的に自然再興への関心が高まっていることなどを受け、国交省の有識者検討会が生物がすみやすい河川環境のあり方などについて議論してきた。

 検討会の提言案によると、河川管理の現場で生物がすみやすい環境や景観を保全していくためには、特に重点的な事項について「河川環境の目標を定量的に設定することが必要」と指摘。目標を設定する場合の指標は「生物の生息・生育・繁殖環境としてふさわしい場」の整備・運用とすることを提案した。具体的には、干潟やヨシ原などの面積▽瀬や湧水(ゆうすい)地の箇所数▽水辺の樹林などの長さ▽水面と砂州の比高――が挙げられた。

 河川整備によって生物の個体数の増加なども期待されるが、個体数や生物種を指標にするのは「困難」とした。整備によって効果が確認できるようになるまでには時間がかかることに加え、生物の増減は河川環境以外の要因でも起こりうる。提言案では、生物の生息などに「ふさわしい場」を整備目標とし、取り組みの進捗(しんちょく)を評価するのが現実的だとした。

 有識者検討会の提言は5月中に正式発表の予定。国交省は提言を踏まえ、生態系保全のための目標の設定の仕方などについて、6月をめどに各地方整備局に通知を出す。具体的な目標は各地方整備局や自治体が検討し、河川整備計画見直しの際に盛り込む。

 提言案や国交省の方針について、日本自然保護協会保護・教育部部長の大野正人さんは「数値目標を定めるからには5年後、10年後の結果が問われる。生物多様性保全のためにどのような効果があったのかを明らかにする必要があり、河川環境を管理することの責任はより重くなるだろう。(目標達成に向けて)国交省は市民や自治体などと連携して、より踏み込んだ政策を実現してほしい」と話す。【大野友嘉子】

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