2024.05.22
LGBTQの交流をイベントから日常に 「はこにじ」がオープン
LGBTQなどの性的少数者が気軽に交流できるスペースが5月、北海道函館市に誕生した。「函館にじいろセンター(はこにじ)」だ。同性婚を認めていない現行制度に違憲判断を示した札幌高裁判決から2カ月余。イベントが多い関係者の交流を「日常」の一つにしたい--という原告の思いがつまっている。【金将来】
函館山のふもとにある黄緑色の扉の長屋。水色で「はこにじ」と書かれたステッカーが貼られた扉を開けると、青色の壁紙で覆われたかわいらしい部屋が広がる。たくさんのイスが並び、おしゃべりを楽しめるスペースになっている。奥に、モニターの設置された部屋もあり、小規模な講演会やイベントを催すことができる。
はこにじは5月15日にオープン。「はこ」は「LGBTQ当事者や地域の多様な人たちが肩の荷を下ろして過ごせる箱(居場所)」と函館がかけられている。「にじ(レインボー)」は性的少数者の人権運動の象徴だ。
施設を運営するのは、一般社団法人「にじいろほっかいどう」。理事長の国見亮佑さん(仮名)は「LGBTQの当事者、支援者、関心のある人たちが、日常的に集まることができる場所になれば」と期待する。道によると、性的少数者につながる人たちが集まり、情報交換や相談できる常設の施設はほかに把握していないという。
同性婚を認めていない現行制度の違憲性が問われた「『結婚の自由をすべての人に』訴訟(同性婚訴訟)」。国見さんはパートナーのたかしさん(仮名)とともに北海道訴訟の原告として、札幌高裁が3月14日に出した画期的な違憲判断の瞬間に立ち会った。「本当によかった」。うれし涙を流すパートナーの背をさすった。
判決に後押しされ、国見さんとたかしさんは性的少数者の居場所づくりのため、走り続ける。これまで各地を回り、性的少数者が参加するイベントの主催を重ねてきた。入念に準備した上で思いを共有するイベントの大切さをかみしめる一方、単発的でなく、ゆるく日常的に交流できる場所も必要だという思いが募っていった。
4月のプレオープンの日は告知すると、函館市内外から30人以上が訪れ、にぎわった。オープン後は、一人でふらりと訪れる人もいれば、仲間とやって来る人たちもいる。扉を開く前に連絡も計画もいらない。
はこにじで迎えるたかしさんは言う。「ここに来たら『なんだかほっとするね』と思えるような場所にしたい。ゆっくりと過ごしたい人、楽しくお話ししたい人。みんな、それぞれが過ごしやすい空間に」
<メモ> はこにじは原則、木、金曜が午後2~7時、土、日曜が午後1~6時の週4日の開館。このほか、イベントや講演も不定期に開催される。ギャラリーも同時にオープンし、マイノリティーをテーマにした作品の展示なども企画する。函館市元町2の9。問い合わせはメール(nijiirohokkaido@gmail.com)。
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