2024.06.06
「化石燃料の広告規制を」 国連事務総長が異例の呼びかけ
国連のグテレス事務総長は5日、深刻化する気候変動への対応の一環として、化石燃料産業の広告を規制するよう全ての加盟国に求めた。報道機関やIT企業に対しても、化石燃料に関する広告を掲載しないよう呼びかけた。「世界環境デー」に合わせた米ニューヨーク市での特別演説で語った。
グテレス氏は「化石燃料業界の多くは、ロビー活動や法的な脅し、大量の広告キャンペーンで気候変動対策を遅らせようとする一方で、恥知らずにも(環境に配慮していると見せかける)グリーンウオッシュを行ってきた」と指摘。「(化石燃料業界は)広告会社やPR会社に支援され、けしかけられて狂気をあおってきた」とも述べ、広告を巡る構造的な問題への批判を展開した。
そのうえで、多くの国が健康に害を与えるたばこの広告を規制していることに触れ、「地球の破壊を助長する」として化石燃料の広告規制にも踏み切るよう促した。実際、フランスは既に、化石燃料に関する広告を法律で規制している。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標を掲げる。しかし、国連の世界気象機関(WMO)は最新の予測で、2028年までの5年平均で1・5度を超過する可能性が47%と試算している。グテレス氏は「もし1・5度を超えたとしても、私たちは引き戻すことができる」と述べ、二酸化炭素(CO2)を吸収する森林や湿地、海を守る必要性を説いた。
またCO2を回収・貯蔵する技術の進展に期待感を示しつつ、「これらの技術は化石燃料の段階的な廃止を遅らせる口実にはならない」と強調。「1・5度への闘いは20年代に勝敗が決する。全ては指導者たちの決断にかかっている」と述べ、主要7カ国(G7)と経済協力開発機構(OECD)の加盟国は30年までに石炭火力発電を全廃すべきだとした。【ニューヨーク八田浩輔】
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