2024.06.09
違和感わからず「何度も切り落とそうと…」 広島で訴える反差別
反差別や反戦を訴える奥田圭(おくだ・けい)さん
グレーの短髪にピンクのアイシャドー。赤いハイヒールと革ジャンを身にまとった姿からりりしさがあふれる。原爆ドームを背に「Stop Genocide in Gaza」と書かれたプラカードを掲げ、トランスジェンダーとして反差別や反戦を訴える。
「何度も切り落とそうと思った」。思春期のころ、自らの体に違和感を覚え始めた。台所の包丁や畑道具の鎌を手に取り、自らの性器に向けたのは一度や二度ではない。当時はLGBTQという言葉が一般的ではなく、違和感の正体はわからないままだった。
「生まれ変わった日」は2018年10月11日。自らが女性の姿でずっと泣いている夢を見た。目が覚めても泣いている自分を見て、性自認に気づいた。
地元広島県庄原市は多様性に対して「閉鎖的な場所」だった。現状を変えようと、22年ごろ、同じ性的マイノリティーたちが語り合える場を自宅に設けた。同時期に市にパートナーシップ制度を設けようと考え、市職員や市議への施行のお願いに奔走した。今年4月1日、庄原市でもパートナーシップ制度が始まった。切望する同性婚の実現と比べると不十分だが、「少しでも後押しになれば」と願う。さらに「これからも逃げずに取り組みたい」と意気込む。
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への侵攻に声をあげ始めたのは昨秋。イスラエルがLGBTQに寛容な姿勢を示すことで侵攻に正当性があるとアピールする「ピンクウオッシュ」に怒りを覚えた。イスラエルとガザ地区の関係は「権力者がマイノリティーを抑圧する図式」であり、性的マイノリティーが置かれる状況と同様だと指摘する。
週2回、原爆ドームで抗議するだけにとどまらず、X(旧ツイッター)でも日々、積極的に反差別を訴える。それに対して、脅迫めいた「抑圧」の手が迫ることもある。
それでも声をあげ続けるのは同じように反差別、反侵攻を訴え続ける仲間がいるから。「そういう人たちの存在が私を立たせてくれる」と話す。【安徳祐】
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