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2024.06.11

ここに45mのごみ山が…生まれ変わった産廃不法投棄事件の現場

 国内最大級の産業廃棄物の不法投棄事件があった瀬戸内海の離島、豊島(香川県土庄町)が、環境学習の島として生まれ変わりつつある。6日には、滋賀県の中学生ら約70人が現場を訪れ、事件の歴史を学んだ。香川県外から大勢の生徒が学びに訪れたのは初めて。対応した地元のNPO法人は、教訓を継承していこうと今後も県内外から広く受け入れていく方針だ。

 豊島の不法投棄は1980年代に本格化し、兵庫県警が90年に廃棄物処理法違反容疑で業者の強制捜査に乗り出すまで続いた。住民らは撤去を求めて93年、香川県などを相手に国の公害調停を申請。2000年、県が業者の指導・監督を怠ったことを認めて謝罪、調停が成立した。県は23年までに産廃や汚染土約91万3000トンを撤去し、処理事業を終えた。しかし地下水は今も、環境省が定める「環境基準」には達していない。

 今回の環境学習は認定NPO法人「瀬戸内オリーブ基金」(土庄町)が島民の協力を得て実施した。

 基金は00年、建築家の安藤忠雄さんと「豊島事件」弁護団長の故中坊公平さんの呼びかけで設立された。「教訓を伝える学びの場」として豊島を活用してもらおうと、企業や県内の学校を受け入れ、環境学習や研修の場を提供。また、瀬戸内海エリアの環境保護に取り組む団体に助成している。調停成立20周年の頃から、県外からの大規模な環境学習にも対応できるよう準備を進めていた。

 今回島を訪れたのは、滋賀県草津市の聖パウロ学園光泉カトリック中学校1年の生徒たちだ。聖パウロ学園が基金の法人サポーターになっている縁で実現した。6日に不法投棄跡地を訪れた生徒たちは、撤去運動に長年関わってきた島民の安岐正三さん(73)と石井亨さん(64)から説明を受けた。跡地はかつては約45メートルの高さにまで産廃が積み上がっていたが、今は岩盤がむき出しの状態になっている。

 生徒たちは事前に基金のスタッフから、豊島事件を解説するユーチューブ動画やパンフレットを教材に講義を受けていた。笹本漣(れん)さんは「実際に来てみると、跡地はあまりに広かった」と驚いた様子。櫛田采花(ことは)さんは「岩や土がえぐられたままで、恐ろしいことが起きていたのだと感じた」と話し、長谷川蒼岳(そうた)さんは「島の人たちが諦めずに協力し、島を取り戻したのがすごい」と語った。

 安岐さんは「生徒の皆さんに、豊島事件の歴史を五感で感じてもらえたと思う。学んだことが、これからの人生の一つの指標になれば。よりよい社会を築いていってほしい」と期待した。

 環境学習の問い合わせは土庄町豊島交流センター(0879・68・2150)。【佐々木雅彦】

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