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2024.06.16

台風で廃業のキャンプ場を買い取った脱サラオーナー 33歳が描く夢

 2019年の台風15号で被害を受け、廃業に追い込まれたキャンプ場を買い取り、復活を目指している男性がいる。キャンプ場「フォレストパーティー峰山」(千葉県君津市大岩)のオーナー、吉川隼大(はやた)さん(33)は、会社員との二足のわらじを履いていたが、一念発起して会社を辞めた。今は同キャンプ場の完全オープンに向けて、準備を進める。そんな吉川さんが目指すキャンプ場とは――。

 国道に面した集落を抜けて、険しい林道に入り約1キロの場所に同キャンプ場はある。約1万平方メートルの敷地に、テントが張れる区画七つと、コテージ・バンガローで構成されている。

異世界の景色に魅了され

 開設してから約50年間続いていたが、19年の台風15号で大木が林道を塞いだり、コテージが雨漏りしたりするなどの被害を受けた。当時のオーナーは修繕費が高額になることなどから、維持ができなくなり、22年に廃業した。

 小さい頃から自然が好きだった吉川さん。東京都内の会社員となってからは、週末にキャンプに行くことが生きがいになった。富津市にあるキャンプ場が気に入って常連となったが、高齢だったオーナーに代わって運営やイベントに携わっていくうちにのめり込み、君津市で会員制のキャンプ場を始めた。

 廃業したキャンプ場がある――。23年4月ごろ、地元の人からそんな話を耳にした。会員が増えていたことから、新しいキャンプ場を作ろうとしていた頃だった。早速、訪れると、敷地内の展望台からは、釣りスポットとして名高い三島湖が一望できた。また、朝夕には雲海が広がり、富士山が見えることもあった。異世界の景色に購入を即決。資金はクラウドファンディング(CF)で募ったり、借金をしたりした。

「一つの村のようなキャンプ場」を

 廃業の前の名前を引き継いだ。パーティーには「うたげ」や「仲間」という意味もあり、吉川さんが目指す「顔見知りが集まり、自由に楽しめる一つの村のようなキャンプ場」のイメージにぴったりだった。

 だが、草が生い茂り、コテージにはカビが目立つなど「何から手を付けたら良いのか」と頭を抱えるほど荒れていた。パワーショベルを購入し、運営スタッフ3人と約1年がかりで整備した。

 吉川さんは今年2月に会社を退職し、キャンプ場の運営一本に集中することにした。翌3月、プレオープンにこぎ着けた。現在はバンガローとコテージの修繕中で、完成した棟から徐々に営業を開始するつもりだという。9月ごろの完全オープンを目指している。

 「自分たちのアジトのようになれば。バーを作り、自然の中に顔見知りが集まる場所になったらすてきだ」と吉川さん。夢は広がり続ける。【近森歌音】

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