2024.07.12
松山での土砂崩れ 文化財の災害対策、難しさ浮き彫りに
松山市で12日未明に発生した土砂災害は、倒壊した民家に住む90代男性と80代女性、40代男性が行方不明となっており、消防などが3人の捜索を続けている。
同市によると、土砂崩れが発生した現場は松山城が建つ城山(城山公園)の北東側のふもとで、一帯は県の土砂災害特別警戒区域に指定されている。過去に同様の被害が発生したことはないという。現場から250メートル西側の山頂付近では、緊急車両用道路の擁壁の復旧工事が市発注で1日から行われていた。市によると、コンクリートの擁壁は緊急車両用の道路が崩れるのを防ぐためのもので、約1年前の大雨で傾きが生じたためいったん撤去し、雨天の際はブルーシートで覆っていた。
市によると、城山公園はほとんどが市有地だが、一部で国や県などの所有地もある。今回崩れた斜面は市有地だった。公園は「松山城跡」として国史跡に指定されているため、文化財保護法上、構造物を設置するなど土砂崩れ防止の対策を取るのが難しい場所だという。市の担当者は毎日新聞の取材に「どういう対策が取れるのか文化庁や県と検討したい」と話した。
識者「流水管理できていなかった可能性」
一方、県によると同日午後5時現在、市内39カ所で避難所が開設され、41世帯77人が避難している。市は市内6地区に出していた「高齢者等避難」(警戒レベル3)は解除したが、土砂崩れが発生した清水地区は引き続き「緊急安全確保」(警戒レベル5)を出している。
現場の映像などを見た愛媛大防災情報研究センター長のバンダリ・ネトラ・プラカシュ教授(地盤工学)は、現地の地質について「砂岩やれき岩といった比較的水を吸収しやすい土壌」だと説明する。土砂崩れは、見た目の状況から山の上層部で起きた可能性があるという。
土砂が崩れた部分は、尾根から谷間のような形状になっている。このため、ネトラ教授は「雨水が上からだけでなく尾根側の横からも集まってくる谷地形だった」という見方を示した。さらに、一般的な山にある沢や渓流など水が逃れる場所がないことも影響したと分析する。「流水管理がきちんとできていなかった可能性が高い。人工的な水路などがあれば防げていたかもしれない」と指摘した。【鶴見泰寿、山中宏之】
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