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2025.02.18

温室ガス目標「35年度60%減」閣議決定 省庁は「65%減」

 政府は18日、次期温室効果ガス排出削減目標を盛り込んだ地球温暖化対策計画(温対計画)を閣議決定した。新しい目標は「2035年度に13年度比60%減、40年度に同73%減」で、政府は同日、国連気候変動枠組み条約事務局に提出した。

 新たな目標は、1990年度以降で排出量が最も多かった13年度を起点とし、50年ネットゼロ(排出実質ゼロ)まで同じペースで削減を続けることを想定し、その中間地点の値を採用した。現行目標の「30年度までに13年度比46%減」もこの経路上にあるという。

 各国は35年以降を期限とする目標を、今月10日までに国連に提出することが求められていた。日本政府はパブリックコメント(意見公募)の結果を精査することなどを理由に、期限内の提出を見送っていた。

 また各省庁の事務・事業に伴う排出削減計画も18日に閣議決定した。削減目標は、国全体の削減率よりやや踏み込んだ「35年度同65%減、40年度同79%減」とし、40年度までに省庁など政府が保有する建築物に太陽光発電設備を100%設置するとしている。

 環境省によると、温対計画案のパブコメには前回21年の5倍超に相当する3211件の意見が寄せられた。大半が政府案よりも高い目標を求める意見だったが、同省はパブコメについて「政府案の見直しが必要になるような新たな論点は見当たらなかった」としている。

 浅尾慶一郎環境相は18日の閣議後の記者会見で、「必要な技術革新が多く不確実性が高まる中で、排出削減と経済成長の同時実現に向けて取り組むことを重視して目標を決めた。具体性や実現可能性の観点からも十分な内容だ」と述べた。

 23年の同条約第28回締約国会議(COP28)の成果文書には、世界の平均気温を産業革命前から1・5度上昇に抑える世界共通目標の実現には「35年までに19年比60%減が必要」と明記された。

 日本に当てはめると「35年度までに13年度比66%減」に相当するため、次期目標について議論していた環境、経済産業両省の審議会の合同会合でも「35年度60%減」などの案に委員から異論が相次いだ。与党・公明党や脱炭素を推進する企業グループなどからも「政府の目標が低すぎる」といった声が上がっていた。【山口智】

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