2025.02.24
「ブナの声」森の輝き撮り続け24年 写真家が伝えたい調和の大切さ

豊かなブナの森と生き物たちの命の輝きをテーマに、自然写真家の斎藤政広さん(76)=山形県酒田市=が、およそ四半世紀にわたって発行を続けた小冊子の写真集が、このほど32号で完結した。秋田、山形両県にまたがる鳥海山に咲く花の図鑑などを手掛ける傍ら、長年にわたって取り組んだ仕事を振り返り、「自然と人の調和が大切だと気付かされた」と話す。
発行に幕を下ろすのは年4回発行の「ブナの声」シリーズ。東北を中心に長野県の白馬村や北海道の日高山なども歩いて撮影し、2001年から発行を重ねてきた。
斎藤さんによると、ブナの声は元々32号を区切りとする予定だったという。一時中断した時期も含め、足かけ24年にも及ぶライフワークとなった。
山形県鶴岡市の市自然学習交流館「ほとりあ」で15日、開催中の写真展に合わせて斎藤さんの特別講座が開かれた。ファンら約30人を前に、朝日連峰を特集した最終号などの写真を交え、撮影当時の様子を紹介した。
体長2センチ足らずのハッチョウトンボの生態を探ろうと湿原に通ったり、イヌワシのペアが冬を前に独り立ちする子供に狩りの仕方を教える姿を追ったり。「小さなトンボには生息する湿原という宇宙のような世界があった。自分も森の時間の中にいるような気持ちに包まれた」と、生き生きとした様子で語りかけた。
一方、カメラのファインダー越しに見つめてきた24年の環境の変化について「人間のわがままで、景観が壊されていくスピードが速くなっている気がする」と懸念を示した。その上で「それぞれにとってふるさとと思えるような周囲の自然の貴重さに目を向けてほしい」と訴えた。
会場に足を運び、創刊号から定期購読した鶴岡市の本間正子さん(74)は「冊子が自宅に届くたび、優しさが伝わってくる写真と添えられた言葉に、日々の疲れが癒やされていくような気がした」と話していた。
ほとりあ館内には3月10日まで展示コーナーが設けられ、自由にバックナンバーを閲覧できる。ブナの声はA4変形判12、16ページで、全32冊のセットは2万7500円。問い合わせは斎藤政広写真事務所(0234・23・3822)。【長南里香】
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