ソーシャルアクションラボ

2025.03.06

アマミノクロウサギを自動車事故から守れ 日産が高周波音使い実験

 国の特別天然記念物アマミノクロウサギを自動車事故から守るため、日産自動車は鹿児島県奄美市や岡山理科大などと共に、高周波音を出す装置を取り付けた電気自動車「サクラ」による実験を奄美市道(森林内の約6キロ)で始めている。高周波音でウサギを車に近づけないようにして事故を防ぐ取り組みで、装置の効果的な取り付け方法などの検討を進める。

 環境省によると、奄美大島でのアマミノクロウサギの交通事故件数は2023年に147件に上り、前年より40件多く過去最多となった。個体数の回復を背景に、車と接する頻度が高くなったことなどが事故死の多い要因とみられる。

 事故防止に向け、日産は歩行者に車の接近を知らせる「接近通報音」の技術に着目した。アマミノクロウサギが敏感に反応する高周波音を出す装置を路上に設置。効果の高い周波数パターンを絞り込み、そのパターンの装置をサクラ1台に搭載し、夜間、時速10キロで走行するテストをした。

 その結果、高周波音のスイッチを入れた途端、多くのアマミノクロウサギが逃げ出す姿が確認できたという。今後、岡山理大の分析を基に車のどの部分に装置を取り付けるのが最も効果的かを探る。高速走行で効果が維持されるのかも調べる。

 日産は「アニマラート」と銘打ったプロジェクトに位置づけており、実験場所の提供などで協力してきた奄美市世界自然遺産課の星野蒼一郎・自然環境係主事は「電気自動車に音波装置を取り付けるだけの環境に配慮した取り組み。プロジェクトの成功へ動き出すことは、『ゼロカーボンシティ』を宣言した奄美市にとっても有意義だ」と話している。【梅山崇】

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