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2025.03.08

事実婚は日本に数百万人? 「家族」として扱われない厳しい現実

 事実婚とは、役所に婚姻届を出してはいないが、事実上は法律婚と同様の夫婦関係にある状態を言う。ただし、公的な制度や権利については対象外となるものが少なくない。

 子どもがいても、原則は母親の単独親権となる。夫婦どちらにも配偶者としての相続権がないため、相手に財産を承継したい場合には、贈与や遺言を別にする必要がある。相続できた場合でも、相続税の軽減が適用されない。お互いの医療行為に対する同意者になれるかどうかは、医療機関の判断に任される。

 海外においても「家族」として扱ってもらえないのが現実だ。家族帯同が可能なビザを得ても、米国をはじめとした主要国では配偶者としての帯同が認められない。

 一方、事実婚の実態は調査が少なく、明らかになっていない。内閣府が2022年に実施した調査で、回答者の属性を「法律婚」「事実婚」「パートナーと暮らしている」「離別」「死別」「未婚」の六つに分けて尋ねたところ、回答者1万906人のうち355人(3・3%)が「事実婚」を選んだ。これらの調査を基に日本の事実婚は成人人口の2~3%と推察されており、単純計算で数百万人単位で存在するとみられる。

 今回、毎日新聞が実施した企業アンケートでも、既婚者に占める事実婚の割合を回答した会社(社員数1万人超)には1・4%が事実婚という例もあった。

 選択的夫婦別姓の導入を求めている一般社団法人「あすには」が24年5月、事実婚をしている111人に調査したところ、86%が改姓を望まないことを理由に婚姻届を出しておらず、選択的夫婦別姓が法制化されたら婚姻届を提出すると答えたのは92%だった。

 夫婦別姓が実現すれば婚姻率が上がると指摘する専門家もおり、「あすには」の井田奈穂代表理事は「多様な選択を認める社会に変わるべきだ」と話した。【深津誠】

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