2025.04.27
マイボトルは20秒でキレイに 象印が万博でみせるミリ単位の技術

ゴールデンウイークを迎え、大阪・関西万博でも熱中症対策が課題となる。そんな中、日本企業の技術が力になりそうだ。水分補給にも役立つマイボトルの洗浄機は、隅々まで洗えるようミリ単位の工夫を凝らしている。また、熱を遮る特殊素材で作ったパラソルを設け、より涼しい日陰を作っている。
晴天に恵まれた24日、大阪の最高気温は23・7度まで上がった。この日の午後、万博会場の中央部にある「静けさの森」の東側では、マイボトルやペットボトルを手にした人が常に20人ほど並び、ウオータークーラーから水を入れていた。
すぐそばにはマイボトル洗浄機がある。高さ110センチで、左側に飲み口を下にしてボトルを、右側にキャップを置いてふたを閉めると動き出す。ノズルからは除菌効果のあるオゾン水が出て、約20秒で洗い終わる。大阪市の菊池直美さん(42)は「初めて目にしたが、清潔感がある。暑い日は本当に助かる」と笑顔だった。
「洗うのが面倒」を解決
マイボトルを持っていても、日常的に使わない人も少なくない。その理由の一つは、洗うのが面倒だという点だ。「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの万博で、洗浄機を提案しようと、メーカーの象印マホービン(大阪市)が呼びかけ、中小企業の中農製作所(東大阪市)やスタッフ(大阪府門真市)などと4年あまりをかけて開発を進めた。
安全性はもちろん、屋外で雨風にさらされるため耐久性を高めた。スピードも重視し、マイボトルの外側を洗うのをやめ、洗浄時間は40秒から20秒に縮めた。内側をまんべんなく洗えるように、直径8ミリのノズルの穴の位置の調整などを繰り返した。ノズルは100本以上試作したという。
遊び心も取り入れた。人が5メートル以内に近付くとセンサーが反応して上部のパネルの目玉が光り、まばたきをするプログラムを組み込んだ。利用が少ない夜間に目立つことを狙ったアイデアだ。
マイボトル洗浄機は、万博会場に10台設置しており、テストラン(リハーサル)の3日間と、13日の開幕後10日間で、利用回数は計1万回を超えた。出足は順調だ。
ペットボトルは洗えません
環境への配慮などを理由に、ペットボトルは洗えない。一定の重さがないと途中で外れ、作動しなくなるという。日本語でラベルを張って注意喚起しているが、ペットボトルをセットして諦める人も目立つという。
マイボトル洗浄機の隣にあるウオータークーラーなどの給水設備は、OSGコーポレーション(大阪市)が担当した。現時点で32台を提供している。実は象印とOSGの本社は道路を挟んで隣にあり、万博会場でも「タッグ」を組んだ形だ。
象印の新事業開発室の小谷啓人サブマネジャー(46)は「ぜひ使ってみて便利だったと体感してほしい。少しでも熱中症の予防に貢献できたら」と話した。
遮熱できるパラソルで涼しく
一方、住友グループが出展するパビリオン「住友館」では、入場を待つ来場者のためにパラソル9本が設置されている。住友金属鉱山が開発した「ソラメント」という特殊素材を使用。太陽光に含まれる近赤外線を吸収する性質があり、下側に熱が届きづらく、涼しく感じるという。
住友館の担当者によると、予約なしでの入場待ちは最長で約3時間、平均で約1時間だという。パラソルは設置しているものの、担当者は「水分補給もしっかりしてほしい」と呼びかけている。【新宮達、鈴木拓也】
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