2025.09.02
環境省、人工光合成普及へのロードマップ策定 「40年までに量産化」

環境省は2日、太陽光と二酸化炭素(CO2)から人工的に燃料などを生み出す「人工光合成」の普及に向けたロードマップ(行程表)をまとめた。2040年までに人工光合成で作った水素などの原料を量産化し、産業レベルで普及させるとしている。
人工光合成は植物の光合成と似た化学反応により、太陽光を使ってCO2から燃料などを作り出す。大気中のCO2を減らし、エネルギー源に変換できる「脱炭素の切り札」として期待される。
同省が有識者検討会に示した行程表によると、30年に人工光合成技術の一部の先行利用を始める。既存技術と組み合わせ、化学メーカーによる香料製造などを想定しているという。40年には水素や一酸化炭素などの基礎原料を量産化する。それらを用いて持続可能な航空燃料(SAF)を製造するなどし、CO2排出量の実質ゼロの実現に役立てる目標を掲げた。
人工光合成は国内外で研究開発が進むが、装置や燃料製造コストが高いなどの課題があり、まだ実用段階にない。同省は26年度予算の概算要求で、人工光合成技術などでCO2を回収して製品を作る設備を導入した企業への補助事業に6億円、産学官の連携構築に2億円を盛り込んだ。
浅尾慶一郎環境相は検討会後の記者会見で「人工光合成は脱炭素社会を築く強力な柱。日本の技術力を生かした新産業創出や国際競争力強化、気候変動の課題解決に直結する。行程表が未来への扉を開く第一歩となることを確信している」と述べた。
検討会の委員の一人で人工光合成を研究する堂免一成・東京大特別教授は「我々の技術はまだ社会実装できる段階にない。今は山の8合目。官の後押しで産学が一緒にやっていく機運ができた」と話した。【大野友嘉子】
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