ソーシャルアクションラボ

2026.08.09

難を逃れた120枚 戦没者の遺影を守る寺 大船渡

 薄暗い一室に入ると軍服を着た若者たちのりりしい顔写真が目に飛び込む。太平洋戦争でニューギニア、フィリピン、択捉島沖などの戦地で散った地元の若者たちだ。

 岩手県大船渡市の綾里地区にたたずむ長林寺には、120人分の遺影が保存されている。

 長林寺は400年以上の歴史がある地区唯一の寺院だ。長年信仰を集め、2011年の東日本大震災では避難する住民を受け入れた。福山康成住職(67)は「文字や数字ではなく、写真があることで、戦争で亡くなった一人の人間として真に迫る力がある」と話す。

 25年2月に大船渡市で発生した大規模山林火災では、綾里地区も大きな被害を受けた。寺のすぐそばにも火が迫り、裏山には今も生々しい焼け跡が残る。幸い建物に大きな被害は無かったが、閉め切っていた本堂の内部にまで黒いすすがたまり、火災の威力を思い知らされたという。

 津波や火災など、度重なる災害で住民たちは避難を強いられ、故郷を離れる人が後を絶たない。寺の檀家(だんか)も震災後1割近くが地区を去った。

 戦没者遺族会の関係者も高齢化し、一室を訪れる人の数は年々減少している。福山さんは「一見すると町は変わっていないが、人は減り続けている。悲しい記憶を後世に伝えるためにも遺影を守り続けたい」。 【西夏生】

関連記事