ソーシャルアクションラボ

2024.11.14

「ポケットない女性服」は当たり前じゃない フリマ開催で不便解消へ

 女性の服にもポケットを――。

 東京・池袋で23日、「ポケットのあるレディース服」を集めたフリーマーケットが開催される。

 ワンピースやスカートなど、女性の衣服にはポケットのないことが少なくない。フリマを主催する卜沢(うらさわ)彩子さん(37)も、かつては「なくても仕方ない」と諦めていた。

 でも、やっぱり不便だな。そう思い始めたのは、2022年に会社勤めを始めてからだった。

実は難しい「検索」

 それまで卜沢さんはフリーランスとして働いていたから気づかなかったが、オフィス勤務だと、トイレに行くたびにハンカチや生理用品を手やバッグに入れて持って行くしかない。オフィスカジュアルの服を探して店を回っても、ポケットのある服はなかなか見つからなかった。

 そんな時、パートナーが手ぶらで結婚式に出かけて行った。「礼服に合うバッグがないから」と、スマートフォンやご祝儀などはポケットに入れていた。

 「内ポケットって、便利なんだよ」と言われたのが、衝撃的だった。女性服には、こんな機能はないのに……。

 卜沢さんがSNS(ネット交流サービス)に「女性服にもポケットが欲しい」と書き込むと、「ポケットがある女性用の服もある」と反論された。確かにポケットのある女性服は増えつつある。しかし、「ポケットのある服」に絞って探すのが実は難しい。

 店舗で洋服を手に取り、ポケットがあるように見えても、実は差し込み口が飾りのようについているだけで、中の袋がない「フェイクポケット」であることは少なくない。

 通販では、ポケットの有無で検索することはできず、写真だけ見ても判断できない。「ポケット」で検索してみても、ポケットのない服が表示されてしまうこともあった。

 化粧品メーカーでインターネットショッピングサイトの運用を担当していることもあり、「ポケットが欲しい」という需要のあるユーザーに届いていないのは、企業にとっても良いことではないと感じた。

全部ポケットが欲しい

 「ポケットのある服」が増えてほしい。そして、簡単に検索して購入できるようにしてほしい。

 そう考え、この思いを大手ファッション通販サイトに届けようと、今年3月、「#レディース服にポケットを」というオンライン署名活動を立ち上げた。

 卜沢さんは性暴力の被害当事者として経験を発信するほか、「性と生」をテーマにしたイベント開催、若者の居場所作りなどの活動もしている。オンライン署名を始めた直後、コーディネーターを務める読書会で参加者に意見を聞いた。20~30代の女性たちは「洋服には全部ポケットが欲しい。カーディガンにも、スカートにも欲しいよね」と盛り上がった。

 男性からも「細身で女性服を着ることがあり、ポケットがなかったり、小さかったりして不便」という声が上がった。「ポケットのある服へのアクセス」には、高い需要があることを痛感した。

変えるためのアクションに

 署名活動に関連して何かイベントができないかと考え、フリマを思いついた。

 「フリマなら、ファッションが好きな人に楽しんでもらえて、参加者の金銭的な負担も少なく、意見交換もできるのではないか」

 開催場所は若者支援施設「みらい館大明ブックカフェ」(豊島区池袋3)。出店する条件は、レディース服を着る機会のある人で、ポケットのあるレディース服を2点以上出品すること。そして、ポケットのある服とない服を分けて展示すること。当日配布される「ポケットあり」「ポケットなし」の札を使い、ポケットのない服はスペースを分けて販売してもらう。

 午前10時から午後1時45分までフリマを開催し、午後2時から午後3時半までは署名活動の中間報告と、ポケットのある服について話し合うお茶会を開く。

 客としてフリマに来場する際は申し込み不要で、出店希望者、お茶会の参加希望者はサイト(https://www.kokuchpro.com/event/ladies_pocket_1123/)からの事前申し込みが必要。

 「フリマを楽しみながら『ポケットがあるとわかっていると服が選びやすい』ということを体感してもらえたら、うれしい」と卜沢さん。そして「『当たり前』『仕方ない』という意識が、『変えるためのアクションがある』という認識になるきっかけとなれば」と期待している。【中嶋真希】

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