2025.06.19
進む気候変動、大幅減収を免れる主食は麦?コメ? 米研究チーム分析

世界で主食として食べられている作物6種類のうち、コメだけは地球温暖化が進んでも収穫量の大幅な減少を免れる可能性があるとの分析結果を、米イリノイ大などの研究チームが18日付の英科学誌ネイチャーに発表した。ただし、主食作物全体の収穫量は大きく減る見通しで、世界各地で食糧難のリスクが高まると指摘している。
研究チームは、世界54カ国1万2658地域の農業や気象、所得などを網羅するデータを用いて分析した。これまでの同様の研究でも、温暖化が世界の食糧システムの脅威になることは指摘されていたが、チームは新たな予測モデルを構築。各地の気温上昇とあわせて、それぞれの経済状況などから、生産者がどれほど効果的な適応策を採用できるかを考慮した。
その結果、今世紀末までに世界の平均気温が約4度上昇した場合、主食作物の収穫量は、大豆が35・6%▽キャッサバが29・8%▽小麦が28・2%▽トウモロコシが27・8%▽ソルガムが21・7%――減ると予測。一方、コメは6%減にとどまる見通しとなった。
大きな打撃を受けそうなのは、現在の気候に適した北米や中国、中央アジアなどの穀倉地帯で栽培される大豆やトウモロコシ、小麦など。一方、コメは主要産地の東南アジアやインドで減少幅が小さいことに加え、温暖化で収穫量が増える地域もあるという。
六つの作物の収穫量を消費カロリーで換算すると、世界の平均気温が1度上昇するごとに、1人につき1日当たり約121キロカロリー減る計算だという。
分析では、適応策を講じた場合、全体の収量減を約34%軽減できるとして、農地の拡大や技術革新の必要性を指摘している。【高橋由衣】
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