2025.11.27
広島の養殖カキ大量死問題、“貧酸素状態”が原因か 専門家指摘
広島県の養殖カキが大量死している問題で、広島大の山本民次名誉教授(水圏生態学)はカキが酸欠状態になったことが原因と指摘している。周辺海域のデータを解析したところ、例年は海底付近にとどまっていた酸素不足の水が、今年はカキが養殖されていた海面付近にまで上昇していたという。
日本一の生産量を誇る広島県で今シーズンの養殖カキの水揚げが始まった10月20日以降、県中部から東部にかけて水揚げされたカキの8~9割が死んでいる異常事態が発生。県が養殖業者に聞き取り調査した結果、大量死は9月下旬~10月上旬に起きたとみられる。
海底では、沈殿している生活排水や魚介類の排せつ物を分解するため酸素不足になりやすい。瀬戸内海は外洋との水の入れ替わりが少なく、夏場になると海底に酸素の少ない水の塊「貧酸素水塊」が現れる。
山本名誉教授は9月末から約1カ月間、県中部の坂町沖で観測された水の酸素濃度を解析。生物は海水1リットル当たり3ミリグラムの酸素が含まれていないと生息できないとされ、この海域では通常、約7ミリグラムの酸素が含まれている。しかし、9月29日~10月7日には約2ミリグラムしか含まれていない貧酸素水塊が水深約3メートル付近まで上昇していた。
山本名誉教授によると例年9月は南風と北風が交互に吹き、冬に向けて北風が強くなっていく。しかし、今年は9月後半から北風の勢力が強く、表層の海水が南に流された結果、酸素濃度の低い低層の海水が浅い海域に押し寄せたとみられる。
山本名誉教授は「貧酸素状態が発生しないように海底の環境を改善しない限り、カキの大量死は今後も繰り返される可能性がある」と指摘している。【武市智菜実】
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