2026.06.16
第21回水害サミット 防災から「災害制御」へ 行動変容と流域治水、首長ら熱論

水害などを経験した全国の地方自治体の首長らが対策などについて意見交換する「第21回水害サミット」(同実行委員会、毎日新聞社主催)が2026年6月9日、東京都千代田区のパレスサイドビルで開催された 。今回は過去の水害で被災した自治体など22自治体が参加 。気候変動による水災害の激甚化・頻発化が進む中、「行動変容を実現する防災情報と意思決定の仕組みの確立」および「水災害リスクの『自分事化』による流域治水の深化と地域づくり」の二つをテーマに、最新の知見の共有と熱心な議論が行われた 。
開会にあたり、実行委員会代表の白岩孝夫・山形県南陽市長は「防災情報は量・速度の両面で飛躍的に高度化しているが、住民の避難行動にいかに結びつけるかが大きな課題だ」と指摘 。続いて金子恭之・国土交通相(水循環政策担当)が登壇し、「氾濫をできるだけ防ぐ・減らすためのハード・ソフト一体となった流域治水の加速化・深化を図っていく 。各地域の安全安心の実現に向け、首長の皆様にはリーダーシップを発揮していただきたい」とあいさつした 。コーディネーターは毎日新聞客員編集委員の元村有希子氏が務めた 。
情報高度化と空振り恐れぬ避難指示
第1部では、「これからの防災・減災と災害制御」と題して東京大学の廣井悠教授が基調講演を行った 。廣井教授は、少子高齢化や気候変動による自然災害の激甚化など、これからの都市を見据えた防災の必要性を強調 。「国民が一丸となれば、巨大災害による死者を激減させることが可能となる」と指摘し、テクノロジーを駆使して被害をコントロールする「災害制御」という新たな概念を提示した 。
これを受け、NTT東日本防災研究所の森田公剛・防災研究部門長が話題提供した 。森田氏は、人流データと気象予測を掛け合わせることで、効果的な「新しい地域防災モデル」を社会実装する研究を紹介 。「災害対策プロセスに基づき、地域の災害リスクと防災力を可視化していきたい」と語った 。 また、国土交通省の久保宜之・河川情報企画室長は、2026年から運用が開始された新たな防災気象情報について解説し、的確な避難行動につなげるための情報発信のあり方を提言した 。
意見交換では、各首長から避難指示を出すタイミングの難しさや、空振りを恐れない対応について意見が寄せられた 。廣井教授は「避難情報を高度化しギリギリを狙いすぎると、想定外が起きた時に逃げ遅れる恐れがある 。空振りになっても理由をきちんと説明し、事後検証する仕組みを作ることが重要だ」と応じた 。
リスクを「自分事」に 企業・住民と協働
第2部では、二つの自治体が「水災害リスクの『自分事化』」に関する事例発表を行った 。 岐阜県大垣市の石田仁市長は、木曽三川の恩恵と水害の歴史を背景とした取り組みを紹介 。江戸時代の宝暦治水など先人の努力を伝える小中学生への防災教育や、地下に整備した雨水調整池などのハード対策、187件にのぼる関係機関との災害時応援協定の締結など、市民や企業が「自分事」として捉えるための多様な施策を説明した 。熊本県御船町の藤木正幸町長は、熊本地震とそれに続く豪雨災害の経験を語った 。創造的復興のシンボルとして誘致したコストコなどの企業に対し、熊本河川国道事務所の支援を受けながら「水害版企業BCP(事業継続計画)」の策定を働きかけた事例を報告 。防災を語る上で「人の命を救うのは私たちだ」という意識を日ごろから持つことが欠かせないと力を込めた 。
その後の意見交換では、岡山県倉敷市の伊東香織市長が、郵便番号を登録すれば市外に住む家族も避難情報を受け取れる「緊急告知アプリ」を導入し、遠方の家族からの声掛けによって避難を促す仕組みを構築した例を紹介 。愛媛県大洲市の二宮隆久市長は、高校生など地域を巻き込んだ防災教育の重要性を強調した 。また、佐賀市の坂井英隆市長は地域のお堀を雨水の貯留施設として活用する取り組みを、和歌山県美浜町の籔内美和子町長や奈良県川西町の小澤晃広町長は農地を貯留機能として活用する対策などをそれぞれ報告し、各地域の特性に応じた工夫が共有された 。
総括として、国土交通省の林正道・水管理・国土保全局長が「皆様の、なんとしても自分の町の住民の命と財産を守るという決意を改めて感じた 。いただいた意見を施策に展開していく」と所感を述べた 。元村有希子氏は「平常時から情報を交換し、見えないリスクに備える会議が最も求められている」と締めくくった 。最後に白岩南陽市長が「他の会議をはるかに超える学びがあるのが水害サミット 。今後も知見を共有し、長く続けていきたい」とあいさつし、閉会した 。
