ソーシャルアクションラボ

2023.03.01

「変わるべきはあなたたち」 英国で同性婚の男性から見た日本

開会中の通常国会では、LGBTQなどの性的少数者に政治がどう向き合うかが重要課題になっている。日本での結婚を諦め、英国人のパートナーと英国で結婚生活を送る日本人の男性に思いを聞いた。【大野友嘉子】 結婚するために移住 日本人男性のKanさん(31)は中学生になって、ゲイであることを自覚した。高校に進学し、両親と親しい友人にカミングアウトすると、「KanはKanだから」という答えが返ってきた。「本当にラッキーだったと思います」と振り返る。 それでも、「自分がおかしいんだ。自分が変わらないといけないんだ」と思い続けた。大学4年でカナダに留学し、性的少数者の友人がたくさんできたことで、考え方が変わった。 日本に帰国後、新たな留学先となったイギリスの大学院でトムさん(28)と出会い、交際がスタート。Kanさんは日本の化粧品会社に就職したため、遠距離恋愛となった。2019年には米動画配信大手「ネットフリックス」のリアリティー番組「クィア・アイ in Japan!」に出演。ゲイとして日本で生きることの大変さを語った。 2人は会えない時間が多くなり、結婚を意識するようになった。でも、同性婚が法制化されていない日本での結婚は「検討すらできない」と判断した。21年に同性婚が合法の英国で結婚し、今はロンドンで暮らす。 「引き裂かれるような気持ち」 首相秘書官だった荒井勝喜氏は記者団の取材に対し、「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも、ちょっと嫌だ」と述べた。「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」との趣旨の発言もあり、更迭された。また、岸田文雄首相は衆院予算委員会で同性婚の法制化について問われ、「極めて慎重に検討すべき課題だ」と従来の見解を繰り返した上で、「社会が変わってしまう」と述べた。 Kanさんは、岸田首相や元秘書官の発言について、「サンドバッグというか、引き裂かれるような気持ちになるでしょうね。自分では何も言えないから、周囲に『そうだね』と相づちを打つくらいしかできないと思います」とセクシュアリティーに悩む人の心情をおもんぱかる。 SNS(ネット交流サービス)などで性的マイノリティーのための法整備を訴えるKanさんはこう思っている。 「僕たちが社会を変えてしまう悪い人たちのような言い方に聞こえるけれど、変わらないといけないのはあなたたちの方ではないのか」

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