2023.10.12
毎月続く、学生のためのフードパントリー:白梅学園大学子ども学研究所から
白梅学園大学(東京都小平市)は、教職員と学生の距離が近いです。コロナ禍において、教員である私(田中真衣准教授)も、学生との会話の中で子どもたちの生活の厳しさも耳にするようになりました。
コロナの感染拡大に伴い、アルバイトの雇い止めにあってしまった学生も目立ちました。入学金や学費まではなんとか用意して大学に入学したけれど、生活費はバイトをして自分で稼いで毎月やりくりする――。という算段できている子もいます。また、15人に1人が、学費を自分で稼いでいます。でも、働いていた飲食店が閉まると、授業が終わった後の夜に働けない。アルバイトで生活費が稼げなくなると、食べるものもなくなってしまう。
一人暮らしではなく、実家から通っている学生からも「親が雇い止めにあってしまった」という声も聞きました。そうした状況を受け、「しらうめフードパントリー」が、教職員と地域の関係者の手ではじまりました。2020年12月にスタートして以降、月1回(原則毎月最終月・火曜の2日間)、教職員やフードバンク、社会福祉協議会などからの寄付で集まった食材を渡す形で、今も途切れることなく続いています。フードパントリーは、学内の寮として使われていた建物に常設。必要な学生に対して教員や学生課が対応して食材などを渡しています。渡しているものは、缶詰や冷凍食品、野菜や果物、シャンプーなどの日用品、コーヒーやお菓子などの嗜好品など幅広いです。
お米や、ゆでれば食べられるパスタ、パスタソースを持って帰る学生が、圧倒的に多いです。おなかにたまる、主食系ですね。その上で、生理用品やトイレットペーパー、日々使うものもなくなります。
「弟・妹が食べるものも持って帰っていいですか?」と聞かれたこともありました。スーツケースを持ってきて、家族に電話しながら何を持って帰るか相談している子もいました。春休みの3月も、大学が閉まっているのにもかかわらず、「食べるものがない」と来た子もいました。
そうですよね。ですから、広く、誰もが、気軽に使えるような雰囲気を心がけています。今は、授業の合間に、お菓子を取りに来る子もいます。
学生からは、 「あまり食べたことのない珍しい野菜もあってうれしい」 「1人暮らしをしているため、インスタント食品など気軽に食べられるものももらえて助かる」 といった声が届いています。
多くの食材を寄付していただけるようになったこともあり、支える範囲を少し広げたい、と思うようになりました。そこで、地域で暮らしている方々に向けて「Amiちゃん宅急便」(前回記事で紹介)もはじめたのです。賞味期限や鮮度の保てない食材を破棄することなく、必要な場に届くような仕組みを試行錯誤しつつ、作っています。こういった活動を、地域の中で、学生とともに、継続的に続けていきたいです。
「誰かのために役に立ちたい」――。白梅学園大学には、そんな志を胸に入学し、福祉の専門職である保育士や社会福祉士、介護福祉士などを目指して学ぶ若者が多く通っています。でも、机の上の勉強だけでなく、困っている方と実際に関わる。その人は、何に困っているのか、どうすればいいか、ニーズを察知し、策を練り、関係機関とつながり、実行する。その一連の流れは、大学の講義の中では学べません。地域で活動しながら、肌で感じ、そういった視点を育んで欲しいと考えています。
実際に保育士として保育園で働き始めたときに、虐待などに気付いた場合にどう動けばいいか、どのように見守り体制を地域で築いていくか、といったことまで考え、動けるようになることが、これからの保育士に求められる役割だと感じています。一人で、全部できるわけでない。だから、人とのつながり――。地域の緩やかなネットワークが大切となってきます。例えば、民生・児童委員さんや地元の小学校のスクールソーシャルワーカーさんなどは、支援が必要な子ども・家庭を、把握していらっしゃることが多いです。現場を知る方が動きやすくなる後方支援を、その地域にある白梅学園大学の私たちが担うことを大切にしています。(取材・編集:山内真弓)