ソーシャルアクションラボ

2023.04.21

「らんまん」主人公のモデル・牧野富太郎ゆかりのムジナモ自生地を発見

 NHKドラマ「らんまん」主人公のモデル、牧野富太郎ゆかりの絶滅危惧種「ムジナモ」の自生地を石川県内で発見したと、国立環境研究所などの研究チームが発表した。国内では野生のムジナモは絶滅したとされており、今回発見した場所が国内唯一の自生地とみられる。

 ムジナモは水生食虫植物。世界各地に分布しているが、国内では植物学者の牧野が1890年に東京・江戸川近くで発見し、形がムジナ(アナグマやタヌキの古称)の尾に似ていることから、この和名をつけた。花は年に1度、1時間ほどしか咲かず、牧野が世界で初めて確認し、植物図に描いて発表した。

 生育地は現在、世界全体で50カ所程度しかないとみられる。国内では1960年代までに環境悪化などのために自生地が消失し、野外では人為的にムジナモを持ち込んだ奈良、埼玉両県内の2カ所のみで生育しているとされてきた。

 研究チームによると、水生昆虫の研究者が2022年10月、調査に訪れた石川県内の農業用ため池でムジナモを発見した。遺伝子解析などの結果、栽培されていたものが持ち込まれたわけではなく、自然に発生した個体群と推測されたという。

 一般に水生植物は種の状態で長く休眠し、環境が変化すると一斉に発芽することがある。このため池では約20年間まったく見つかっていなかったが、最近近くの森林で間伐が行われて日当たりが良くなり、これがきっかけに発芽、成長した可能性があるという。

 自生地保護のため、ため池の場所は公表していない。国立環境研究所の西広淳・気候変動適応センター副センター長は「今回見つかったため池は、水源の水質が守られ、ムジナモの生育に適した環境が維持されていた。アメリカザリガニなど外来種の侵入がなかったことも大きい」と話す。

 研究成果は生物多様性分野の国際学術誌に掲載された(https://doi.org/10.1016/j.japb.2023.03.013)。【三股智子】

関連記事