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2023.06.20

公海に海洋保護区 国を越え生態系守る国際協定、国連で採択

 どこの国にも属さない公海の生物多様性を守り、海洋資源の持続可能な利用を目指す国際協定が19日、ニューヨークの国連本部で開かれた政府間会合で採択された。発効すれば、国の管轄権を越えた海域で生物を保護する初の法的拘束力がある協定になる。

 公海は地球上の海の6割以上を占める。しかし、気候変動や乱獲、プラスチックごみなどによる海洋汚染で海洋生態系の危機は深刻化しており、国連によると、保護されている海域は1%にすぎない。

 協定では、公海の海洋生物などから得られたデジタル化された遺伝情報を基に、国や企業が医薬品や化学品を開発して利益を得た場合、協定の締約国に公正に配分する枠組みを設ける。また、重要な種やその生息地を保全・管理するために、公海に海洋保護区を設けることを可能にし、公海での商業活動に関する環境影響評価の基本的なルールも定めた。

 昨年12月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「2030年までに世界の陸と海の30%以上を保全する」という目標の達成に向け、法的な基盤になることが期待されている。

 公海の海洋生物を保護する国際協定は20年近く前から検討されてきた。協定の発効には60カ国の署名・批准が必要になる。グテレス事務総長は「海洋に新たな生命と希望を与え、闘うチャンスを与えた」と歓迎し、加盟国にすみやかに批准するよう呼びかけた。【ニューヨーク八田浩輔】

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