ソーシャルアクションラボ

2023.06.21

性的少数者も受診しやすく 高知大病院にSOGI支援チーム誕生

 性の多様性に配慮し、LGBTQなど性的少数者が安心して受診・療養できる環境を整えようと、高知大学は2023年6月、医学部付属病院に「SOGI支援チーム」を設置した。同大によると、大学病院では順天堂大学に次いで2番目、国公立大学では初めての取り組みだという。

 「SOGI(ソジ)」は、好きになる性「Sexual Orientation(性的指向)」と自分の心の性「Gender Identity(性自認)」の英語の頭文字をとった言葉。多様な性のあり方を示す表現として、国際的に使われることが増えている。

 高知大のSOGI支援チームは現在、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、公認心理師、事務職員など約10人で構成。もともと付属病院内にあった「エイズケアチーム」のメンバーが中心だ。エイズケアチームが担当するHIV陽性者はゲイの人が多く、チームのメンバーは以前から、医療現場での性的少数者への支援の必要性を感じていた。

 チーム設立に向けて、メンバーは2022年10月、先進的な取り組みをしている順天堂大を見学し、研修を受けて性的少数者に対する医療提供のあり方などについて理解を深めた。

「問診票の性別欄、必要?」

 今月19日には、NPO団体「レインボー高知」(高知市)代表の宮田真さんと、順天堂大の武田裕子教授を講師に招き、院内向けに設立記念研修会を行った。

 宮田さんは、戸籍上の性を女性から男性に変えた自身の体験を基に、変更する前と後で病院を受診した際にそれぞれどのような思いをしてきたかを明かした。

 戸籍を変える前は「問診票の性別欄にチェックを入れることが本当に苦痛だった」と振り返り、「保険証に性別が記載されているので、問診票に性別欄はいらないのでは」と疑問を投げかけた。また、見た目と戸籍上の性が違うため、「窓口でフルネームで呼ばれることもつらかった。番号か、もしくは番号と名字だけで呼んでほしい」と要望した。

 変更後は、窓口で「以前は女性になっていますが、今は男性ですか?」と大きな声で聞かれたことがあったといい、「性別変更している時点で性同一性障害だと気づいてほしい」と細やかな配慮を求めた。さらに、「受診したときの精神的な苦痛が大きいため、何かあっても病院に行かない」という性的少数者が多い現実を訴えた。

 武田教授は21年5月、医学部付属順天堂医院(東京都文京区)に有志職員でワーキンググループを作った。SOGIへの理解を深める研修会の実施や、22年11月には大学病院として初のSOGI相談窓口を開設したことなど、これまでの取り組みを紹介した。武田教授によると、同医院では多様な性を象徴するレインボーフラッグを受付に設置し、研修を受けた職員はレインボーバッチをつけるなど、性的少数者が受診しやすい環境作りを実践しているという。

 研修の最後に、高知大SOGI支援チーム代表の武内世生(せいしょう)准教授が「性的な理由で医療を受けられない人をなくしたい。課題は多いが、一歩一歩前に進んでいきたい」と締めくくった。同大では今後、職員の教育▽問診票などの性別の書き方や入院時の部屋をどうするかなどのルール作り▽施設の整備――を段階的に進めていく方針だ。【前川雅俊】

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