2023.07.10
福利厚生で「フェムテック」 ドンキは低用量ピルの購入費を補助
福利厚生で、女性特有の体の悩みをテクノロジーで解決しようとする製品やサービスなどを指す「フェムテック」が広がりつつある。総合ディスカウント店の運営会社は、生理前の心身の不調「月経前症候群」(PMS)や月経痛を緩和する「低用量ピル」の購入費を補助する。導入の背景とは――。【菅野蘭】
低用量ピルは1999年に認可され、医師の処方箋が必要だ。月経を巡る不調改善や生理周期の安定、避妊などに効果が見込める。
福利厚生の一環で2023年3月、低用量ピルの購入費全額補助を始めたのは、総合ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営する「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)」。
PPIHは22年5~6月、グループの国内法人に所属する女性社員と契約社員を対象に意識調査を実施。働きやすい環境を整えようと、福利厚生制度や月経を巡る仕事上の困りごとなどを質問した。
1129件の回答を分析したところ、約4人に1人が月経痛で仕事を休んだ経験があった。うち約3割は2~3カ月に1回以上の頻度で休んでいた。さらに「アイデア」として、ピルの服用費の補助を求める声もあり、これらのデータを参考に新たな補助制度を整えたという。
医師のオンライン診療代とピル購入費用、自宅への送料まで全額を補助する。また、社員の配偶者や内縁、同性のパートナーの女性にも費用の半額を補助する。
PPIHによると、導入から2カ月で既に約100人が利用。同社のダイバーシティ推進課の増渕美里さんは「PMSや生理痛をコントロールできるようになれば、心身の健康維持につながります。仕事のパフォーマンスを発揮しやすいよう、会社としてサポートするのは当然です」と話した。
福利厚生の充実を望む声9割
宝島社が発行する女性誌と男性誌の計13誌は共同でプロジェクト「もっと話そう!Hello Femtech(ハローフェムテック)」を展開。23年2~3月に読者3349人を対象に調査を実施したところ、勤め先で「フェムテックに関する福利厚生がある」と回答した人は18・2%と2割以下だったが、回答した93・2%の人がそうした福利厚生を「充実させてほしい」と希望した。
フェムテックのジャンル(複数回答)については、更年期障害(67・8%)の次に月経関連(64・1%)が続いた。
プロジェクトの担当者は「フェムテックに関する制度の導入はもちろん、福利厚生があったとしても、周囲に相談しにくく、利用されていないケースもあります。理解を広げる環境づくりが求められていると考えています」と話す。
広がる福利厚生
低用量ピルのオンライン処方も広がりを見せる。
オンライン処方サービス「スマルナ」を運営する株式会社「ネクイノ」(大阪市)は、20年9月から法人向けの事業を開始。5月末時点で約60社が福利厚生として導入しているという。医師の診察からピルの処方まですべてオンラインで完結するため、遠方からの受診も可能だ。
ネクイノによると「産休・育休に次ぐ女性向けの福利厚生の一手」「女性特有の課題に会社として対処する」といった狙いで、女性従業員の多い企業が導入する傾向にあるという。同様に処方サービスを展開する「mederi(メデリ)」(東京都)は、契約先の企業がメディアに取り上げられて以降、問い合わせが相次いでいるという。担当者は「社会的な需要を感じている」と話した。
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