2023.09.09
「システム変革が必要」 温暖化対策の進捗報告受け、国連が指摘
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の事務局は8日、世界の気候変動対策の進捗(しんちょく)を評価する報告書を発表した。世界の平均気温の上昇幅を産業革命前から1・5度に抑える国際目標の達成に向けた「窓は急速に狭まっている」とし、気温上昇を抑えるために「あらゆる分野におけるシステムの変革が必要」だと指摘した。
報告書は、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、温暖化対策がどこまで進み、何に課題があるかを5年ごとに包括的に評価する「グローバルストックテーク」と呼ばれる取り組み。11~12月にアラブ首長国連邦(UAE)で開催される気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)でも話し合いの土台となる。
報告書は、地球規模で強化すべき取り組みとして▽再生可能エネルギーの拡大▽化石燃料の段階的廃止▽森林破壊を止め、回復させる▽途上国の気候変動対策に対する官民の支援拡大--などを挙げた。運輸部門では、電気自動車の利用に排出量を減らす「最大のポテンシャル」があると位置づけ、農業部門では肉の消費量や食品廃棄物を減らすなど需要サイドの取り組みも排出量抑制に寄与すると強調した。
UNFCCCのスティル事務局長は声明で「報告書が自国にとって何を意味するか、次に取るべき野心的な行動を理解するよう強く求める」と各国政府に呼びかけた。
国連のグテレス事務総長は8日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するため訪問したインドで記者会見し「気候危機は劇的に悪化しているが、集団的な対応は野心も信頼性も緊急性も欠けている」と指摘。先進国は2040年まで、新興国は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに近づけるよう求めた。【ニューヨーク八田浩輔】
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