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2023.09.20

南方系マダニ、東北の離島で初確認 温暖化の影響か 山形大など

 東南アジアなどに生息する複数の南方系マダニを東北地方の離島で初めて確認したと、山形大と森林総合研究所(茨城県つくば市)の研究チームが発表した。感染症を媒介するマダニが、地球温暖化などの影響で北へと分布拡大が進んでいる可能性があるという。

 チームは2021年6~8月、東北の離島での野外調査で、計9種のマダニを採集。このうち5種は主にインドやタイ、インドネシア、西日本などに生息する種で、4種は今回の確認で北限を更新したという。

 また、マダニはシカやイノシシなどの哺乳類が宿主となって分布を拡大させることが多いと考えられてきたが、今回見つかった島には野生の哺乳類はほとんど生息せず、渡り鳥に寄生してやってきたとみられる。このため、渡り鳥が利用する離島がダニの分布拡大の「最前線」となっている可能性もあるという。

 見つかったマダニの中には「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス」を媒介する種も含まれていた。SFTSの主な症状は発熱や嘔吐(おうと)などで、最悪の場合は死に至る。国立感染症研究所によると、今年は7月末までに感染者は95人で、届け出時点での死亡者はこのうち5人だった。

 これまでSFTSの患者は西日本に集中していたが、マダニの分布拡大で東日本などで感染のリスクが高まることになる。チームの小峰浩隆・山形大助教(生態学)は「東北での発見に驚いている。温暖化により寒さに弱い南方系マダニ類の生息域が北に広がりつつあると考えられる。危険な感染症の拡大を防ぐためにも、宿主の鳥の特定や野生動物との関係を明らかにするなど分布拡大の方法を明らかにしていきたい」と話す。

 研究成果は、ダニ学の国際学術誌に掲載された(https://link.springer.com/article/10.1007/s10493-023-00819-x)。【山口智】

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