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2023.10.21

100億匹のズワイガニが姿消す アラスカ沖、「海洋熱波」で餓死か

 世界有数の豊かな漁場が広がる米北部アラスカ沖のベーリング海で近年、100億匹以上のズワイガニが姿を消し、地元経済に大きな打撃を与えている。米科学誌サイエンスは19日、ベーリング海東部で急激に海水温が上昇した「海洋熱波」の影響で大量のズワイガニが「餓死」したとみられるとの論文を掲載した。

 論文を発表した米海洋大気局(NOAA)などの研究チームは、気候変動は漁業にとって乱獲に次ぐ「存亡の危機」だとしている。

 研究チームはこれまでの調査で、ベーリング海東部のズワイガニの個体数は2018年に記録的な高水準に達した後に急減し、21年にかけて100億匹以上が消えたと報告していた。異常事態を受けてアラスカ州当局は昨年初めてカニ漁を禁止。アラスカ産ズワイガニの水揚げ高は年平均1億5000万ドル(約225億円)で地域経済への貢献も大きく、地元メディアによると税収に影響が出ている。

 研究チームは今回、水温や個体数、漁獲量などのデータや実験を組み合わせ、ズワイガニの個体群が「崩壊」した謎を探った。ズワイガニは水温が上がると代謝に影響して生息に必要なカロリーも上がることに着目。ベーリング海では18年ごろから海洋熱波に襲われた時期と個体数が増えた時期が重なり、多くのカニがえさ不足で「飢餓」状態になって死んだと考察した。

 論文では、ベーリング海は気候変動による生態系変化の「最前線」にあるとした上で、「ベーリング海で現在直面する問題は、世界的に立ち向かわなければいけない問題の前兆だ」と指摘している。【ニューヨーク八田浩輔】

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