2023.10.30
知的・発達障害ある受刑者に特化の刑務所 社会復帰へ専門的支援
知的障害などを持つ若年の受刑者に特化した全国初の刑務所「市原青年矯正センター」(千葉県市原市磯ケ谷)が30日、開庁式を開いた。定員を72人と国内最小規模に抑え、受刑者の個性や特性に応じた手厚い指導プログラムで出所後の社会復帰を後押しする。11月1日に収容を開始する。
同センターは1985年に開設され、4月に廃止された少年院「市原学園」の設備を一部改修するなどして法務省が新たに設置した。知的障害や発達障害などがあり、入所時におおむね26歳未満、初犯で刑期がおおよそ5年以下などの条件に該当する男性受刑者を収容する。少年院の矯正教育のノウハウを活用し、1人の受刑者を心理学や教育学などを専攻した教育専門官らが複数で担当する。
居室も特徴的だ。一般的な刑務所では受刑者が生活する個室は施錠される「閉鎖寮」が多いが、同センターは敷地外への外出はできないが、自由に敷地内を行き来できる無施錠の「半開放寮」を採用。こうした自由度の高い環境の中で、対人関係や生活を送る上での時間管理などを身につけてもらうため、掃除や洗濯などは受刑者同士が役割分担をして生活能力を養う仕組みにした。
また、社会福祉士や産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなど多くの職種の職員を配置しているのも特徴だ。受刑者は1日の半分を刑務作業に従事し、残りの半分をそれぞれの障害特性に応じた指導プログラムに取り組む。このほか、協調性を育むためにサッカーやバレーボールなどの体育指導を国内の刑務所としては初めて取り入れた。
30日の開庁式には、柿沢未途副法相や熊谷俊人知事、地元住民など66人が参加し、センター内の寮などを見学した。合田直之センター長は「入所する受刑者は犯罪を行う背景に知的障害など生活上の困難がある。困難を乗り越える経験を重ねて社会生活での支援などにつなげたい」と期待した。【長沼辰哉】
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