2023.11.14
「焦らずせんといけんね」 被災4カ月、ほど遠い再建 九州北部大雨
7月の九州北部大雨による土砂崩れで、福岡県東峰村小石原鼓の小石原焼「蔵人(くらんど)窯」代表、小野永蔵さん(69)の店舗や工場、窯場など全4棟が全壊した。被災から約4カ月が過ぎたにもかかわらず再建はほど遠いが、小野さんは「すぐにできるもんじゃない。焦らず再建せんといけんね」と落ち着いて将来を見据える。
裏山の異常な音に気づいたのは、村道を挟んだ民家に住む長男雄大さん(39)だった。7月10日午前7時ごろ、雄大さんが避難しようと妻(37)、長男(5)、長女(2)と自宅の外へ出た瞬間、裏山で土砂崩れが起きたという。同7時27分、少し離れた場所に住む小野さん夫婦には、雄大さんの妻から携帯で「今、安全な場所に避難しました」と連絡があった。後にがれきの中から見つかった工場の時計は午前7時2分を指して止まっていたという。
小野さんの店舗と工場、窯場の3棟は、雄大さんの自宅と同じ敷地内にあって全壊した。小野さんと妻昌子さん(67)、雄大さんの家族4人の計6人にけがはなかったが、工場や窯場で保管していた作品数千点はほぼすべてが割れた。
今は10年前まで使われていた近くの窯場などを借り、小野さん夫婦で窯の掃除や棚の設置など作陶の準備を進めている。しかし、板粘土をこね直して真空にする陶芸土練機(どれんき)など機械類の修理も必要で、作品を販売するまでにはまだ時間がかかるという。
雄大さん夫婦は、自宅を含む店舗や工場、窯場を再建するため、新たな土地探しや補助金の申請手続きなどに追われ、再建費用は数千万円かかる見込みだ。昌子さんは「土練機などを修理するにも部品は受注生産なので時間がかかり、工場や窯場に必要な広大な土地もなかなか見つからないなど不安はあります。だけど、くよくよしてもいられない。これからも家族全員で前を向いて進みます」と話した。
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小石原焼の蔵人窯(東峰村)はクラウドファンディング(CF)で支援を呼びかけている。目標金額は300万円、11月30日まで。詳細は写真共有アプリ・インスタグラム「小石原焼蔵人窯元」または電話(080・5273・3188)。
福岡市中央区のアクロス福岡1階匠(たくみ)ギャラリーは、7月の九州北部大雨で被災した小石原焼や高取焼、久留米絣の工房などを支援しようと、復興支援販売会を開いている。展示は4窯元と2織元が手がけた皿や茶わん、反物など約1000点。匠ギャラリーの若本健太郎さん(54)は「日用品として使ってもらうことが産地の支援につながる」と話した。販売会は入場無料、20日まで。【本多由梨枝】
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