2023.11.17
新品以上の魅力?使用済み太陽光パネル再利用 徳島で実証実験
太陽光設備の販売や設置などを手がける「喜多機械産業」(徳島市)が2024年4月から1年間、使用済み太陽光パネルを再利用する実証実験を徳島市内の施設で実施する。今後、役割を終えたパネルが大量排出されるという国の推計もあり、処理方法は模索段階だ。だが、使用済みパネルでも太陽光で発電する性能は十分ある。考え方によっては、新品以上の魅力があり、活用しない手はない。
喜多機械産業は、市ライフル射撃場(同市入田町)の屋根部分に方形(165センチ×98センチ)のパネルを30枚程度設置する予定だ。パネルの変換(発電)効率といった性能は新品時より落ちる。同社は劣化具合などを調べた上で、最大出力計8キロワット程度を確保し、発電した電力は射撃場で使う方針。
パネルは、不要となった設置場所から撤去したものを使う。このうち、表面のガラスにひびが入るなど破損したパネルや電気トラブルで発電しないパネルは廃棄・リサイクルに回す。
劣化しててもOK
一方、変換効率が落ちるなど劣化していても、発電性能を維持しているパネルは再利用する。同社は1年間の実証実験で、発電性能を確認するとともに、信頼性を確認する。設置場所を提供する徳島市もモニターを設置して発電状況を確認するとともに、市民や企業などからの見学を受け入れる。
使用済みのパネルは産業廃棄物に分類される。適正に処分するには、一定の費用が必要となる。だが、同社は再利用可能なパネルを選別するノウハウを積み、将来は有償引き取りも目指している。パネル設置者からすれば、引き取り処分料を支払う必要のあった使用済みパネルが価値あるものに変わることになる。同社の担当者は、再利用可能なパネルの選別には「今までの知見と今後のデータ収集が必要だ」として実証実験に期待を寄せている。
国内で稼働する太陽光パネルは、1990年代から導入が始まった。電源構成比をみると、2011年度には0・4%に過ぎなかったが、21年度には1割弱にまで増加している。12年導入の「固定価格買取制度」(FIT制度)などが後押しした。
FIT制度は、一定期間(10~20年間)、国の決めた価格で電力会社が電力を買い取る。一般家庭などの買い取り期間は10年間で、事業用は20年間だ。制度開始時に導入したケースでは、既に期間が終了している。環境省は、パネルの寿命を20年間とした場合、使用済みパネルの排出は早ければ30年代半ばまでには現在の数十倍にあたる年間約80万トンに達すると推計する。30年度に温室効果ガス46%(13年度比)削減を目指す政府は、使用済みパネルの活用を課題に挙げている。
太陽光発電には、夜間や曇天時に十分発電できない弱点もあるが、温室効果ガスの排出削減に貢献する再生可能エネルギーだ。
最大の利点は導入コスト
使用済みパネルを再利用する最大の利点は、導入コストを抑えられること。パネルの単価はかつてに比べると下がったが、新品導入時と比較すると、減価償却の終わったパネルならさらにコスト削減を期待できる。
また、新たなパネル製造に伴う温室効果ガスを抑えられる。産業技術総合研究所(東京都)のサイトによると、太陽光パネル製造時に排出される温室効果ガス量は、太陽光で1、2年発電した際に削減できるガス量に相当するとされる。運転開始から1、2年は製造時に発生したガス相当量を「回収」し、その後は、削減量の方が大きくなるイメージだ。再利用パネルなら、発電を始めた時点から温室効果ガスを排出しない電力を得られることになる。このため、変換効率が多少落ちていても、活用する意味がある。
さらに、産業廃棄物として処分する費用を節減できる。パネル表面を覆うガラスのほか、アルミフレームやシリコーン(ケイ素樹脂)、電極材料(銅、銀など)など多くの部材はリサイクルできるとはいえ、一定の廃棄物が出る可能性もある。100%再利用する場合と比較すると、管理型最終処分場の容量を多少なりとも圧迫することになる。
パネルの寿命以外にも設置場所の賃貸契約終了といった理由で、今後、環境省の想定より早く使用済みパネルが大量に出る事態も想定される。劣化パネルでも日光が当たると通電する恐れもあり、適切な管理が必要だ。喜多機械産業によると、リサイクルに取り組む企業は増えているが、リユース(再利用)まで手がけるのは、まだ少数という。【植松晃一】
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