ソーシャルアクションラボ

2018.08.23

現地レポート:ピンクシャツデーinバンクーバー

ピンクのシャツを着ていじめ反対の意思表示をする「ピンクシャツデー いじめ反対運動」がカナダ東部のノバスコシア州で誕生したのは、2007年のことです。ピンクのポロシャツを着て登校したことをきっかけにいじめにあった少年のため、皆でピンクシャツを着て学校からいじめをなくしたという実話が共感を呼び、運動として広がっていきました。

 今年2月28日、カナダのバンクーバーで開催された集会イベント「ピンクシャツデーラリー」に参加しました。現地の様子を紹介します。(寄稿:ピンクシャツデー実行委員会代表・高梨京子)

カナダ発祥のいじめ反対キャンペーンが2月にバンクーバーで開催された
いじめ反対の意思をピンクのシャツを着て示し子どもたちが活動資金を募るレストランや警察、消防も参加し企業は寄付金付きの商品販売

https://youtube.com/watch?v=KHcBShVGzEQ%3Ffeature%3Doembed

◇中心街でラジオとテレビが生中継

 雨天となったこの日、午前7時には、ロゴ入りのピンクのTシャツを着たボランティアの子どもたちが街のブロックごとに立ち、キャンペーンへの参加を呼びかけながら募金活動をしていました。グループごとに大人が1人ついています。朝早いので、子どもたちの目は眠そうでした。

 出勤途中の何台もの車がクラクションを鳴らしたり、運転席から口笛を吹いて応援し、ボランティアの人たちはそのクラクションの応援に対して雄たけびをあげたり旗をふったりして応えていました。

 バンクーバーの中心街、グランビルストリートとジョージアストリートの交差点にある広場では、早朝からラジオ局「CKNW980」とテレビ局「グローバルニュース」が共同ブースを設置し、街角から当日の様子が生中継されました。ピンクシャツデー運動の創始者トラヴィス・プライス氏も番組に出演し、キャンペーン参加を呼びかけました。

 ブースの横には、スポンサー企業であるカナダ最大の信用組合「コーストキャピタル」製作のピンクボードが設置され、通勤・通学の前に自ら足をとめメッセージを書き込む人々の姿が見られました。カナディアンフットボールのプロチーム「BCライオンズ」の選手2人も、ボード脇に立ち募金への協力を呼びかけていました。

中心街のシティーセンター駅前で募金活動中の消防士と救急隊員。そろいのピンクシャツを着た着ぐるみも登場=バンクーバーで2018年2月28日、高梨京子さん撮影

◇店員がピンクシャツを着て接客

 カナダで販売されているキャンペーングッズの売上金と募金からの収益はすべて、子どもや若者を対象とした「いじめ防止プログラム」を実施する活動資金として、基金団体を通して赤十字などの実施団体(慈善団体)に送られます。グッズにはピンクTシャツのほか、缶バッジやリストバンドなどがあります。集会イベントには毎年テーマが掲げられ、今年は「ネットいじめ」に焦点が当てられました。グッズのピンクTシャツやブロックごとに置かれた立て看板には、「ネットは良いことに使おう」というキャッチコピーとともに、スマホのキャラクターが印刷されています。

 広場に面する店の前にも、ピンクシャツデーの看板が立っていました。ドラッグストアチェーン大手のロンドンドラッグス・グランビル店で、この日スタッフはピンクのTシャツを着用して仕事をします。

 ほかにも銀行や飲食店のスタッフがピンクシャツを着用したり、ピンクにちなんだ商品を販売し売り上げの一部を寄付しています。ファミリーレストランのデニーズは、店内にピンクシャツデーのポスターを張り出し、店員がピンクのTシャツを着ていました。有名チョコレート店「ロッキーマウンテンチョコレート」では、りんご形のピンクの大きなチョコレートひとつが8カナダドル(約648円)で販売され、そのうち1カナダドル(約81円)が寄付に充てられるとのことでした。

◇警察車両にもピンクでメッセージ

 多くの州警察もキャンペーンに参加しています。集会に参加した警察官の制服の胸元、「POLICE」の文字がピンクです。警察車両の側面にはピンクのラインが塗られ、「いじめは、もうやめよう」というメッセージがピンクの縁取りで書かれていました。

警察車両には「いじめは、もうやめよう」というメッセージが書かれ、ピンクで縁取られている=バンクーバーで2018年2月28日、高梨京子さん撮影

 消防士と救急隊員は、制服の下にピンクのTシャツを着て、ピンクシャツデーの旗を持って一緒に駅前で募金活動に参加していました。

 夜になると、2010年に開催されたバンクーバー冬季五輪の聖火台が、キャンペーンに合わせてライトアップされました。港町バンクーバーのランドマークとして知られるカナダプレイスもライトアップされ、船のマストと帆をイメージした建物が海辺に向かって照らし出されました。カナダプレイスにはコンベンションセンター、ホテル、映画館が入っていて、例年ライトアップしてピンクシャツデーをアピールしています。

 カナダでは首相のジャスティン・トルドー氏が運動に賛同していることから、政治家も参加しています。ブリティッシュコロンビア州のジョン・ホーガン知事は子どもたちとともにピンクのシャツを着て運動への参加を呼びかけ、ツイッターで発信しました。

有名チョコレート店「ロッキーマウンテンチョコレート」のショーケース。りんご形のピンクの大きなチョコレートは売り上げの一部が運動に寄付される=バンクーバーで2018年2月28日、高梨京子さん撮影

<提案をお待ちします>

 バンクーバーの「ピンクシャツデーラリー」と同じ2月28日、横浜市で、民間団体が中心となった推進委員会が主催し、行政の後援や企業の協力を得たピンクシャツデーの集会が開かれました。いじめによって自殺した子どもたちの遺書が読み上げられ、いじめが描かれた児童書の朗読劇やコンサートなどが催されました。

 バンクーバーや横浜のような街ぐるみのイベントを一緒に考えませんか。

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