ソーシャルアクションラボ

2018.10.01

保護者1019人に聞いた いじめ問題意識調査から見えるもの

・事実公表し、原因究明求める声多数
・相談先は「学校の先生」が8割
・学校は、頼りにされている自覚と責務を

◇実際の事例を基に基に質問してみたら…

 高校受験をひかえた冬に、1人の生徒が自殺しました。原因はわかりません。あなたが、同じクラスの保護者の1人だったとして、あなたは事実をすぐに公表し、原因究明してほしいですか?ーー毎日新聞では成人男女約1000人を対象に実施したネットアンケート調査で、こんな質問をした。

Table_19横:Q16 高校受験をひかえた冬に、1人の生徒が自殺しました。原因はわかりません。あなたが、同じクラスの保護者の1人だったとして、あなたの考えにもっとも近いものを1つお選びください。 ここからは、架空の出来事としてあなたの意見をお答えください。縦:子どもの学齢(子どもが複数いる場合は、一番下の子どもの学齢)]

 2015年11月、茨城県取手市での市立中3年の女子生徒が自宅で自ら命を絶った。同市教委は「受験への配慮」を理由に、自殺の事実を伏せたまま生徒らに調査をし、「いじめはなかった」と結論づけた。2年後の毎日新聞の紙面に、同級生が「(自殺の事実を)隠さずに言ってほしかった」と取材に答えた記事が掲載された。このようなことがあったので本紙の調査で聞いてみた。
 子供を持つ20代から60代までの男女1019人にネットで調査。「結果はすぐに公表し、原因究明してほしい」と7割が回答した。回答者を中高生の保護者に絞ると8割を超えた。市教委の「配慮」は保護者には求められていないようだ。青山学院女子短期大非常勤講師の笠原昭男氏は「受験への配慮より事実をはっきりさせてほしいという親の願いが読み取れる」と話した。

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横:Q7 もしも、あなたの子どもがいじめられていると知ったらどうすると思いますか。 あなたの子どもがいじめられていると想定してお答えください。縦:子どもの学齢(子どもが複数いる場合は、一番下の子どもの学齢)]

 アンケート調査では、保護者に子どもがいじめられていると思った兆しはあるか、いじめ発覚後に思い当たったことも含めて聞いた(複数回答)。4割が「元気がない」「登校をしぶる」といった兆しがあったと答えた。「衣類や持ち物が汚れていたり、傷をつけてきたりする」「持ち物をなくす」ということをあげた保護者は1割以上いた。一方、「特に兆しはなかった」との回答も2割弱あり、発見の難しさをうかがわせた。

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横:Q5子どもがいじめられていると思った兆しはありましたか。※いじめが発覚したあとに思い当たったことも含めて答えてください。 前問で、子どもがいじめられている・いたと答えた方にうかがいます。 [Q5]
縦:子どもの学齢(子どもが複数いる場合は、一番下の子どもの学齢)]

◇「暴力いじめは警察に」 アンケート調査とラボ投票との違い

 暴行や恐喝といった類いのいじめは、学校ではなく警察に訴えるべきかとの質問には、6割以上が「賛成」だった。「反対」は1割弱、「わからない」は3割だった。ソーシャルアクションラボでも同様の内容で投票を行い、6割以上が賛成だった。

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縦:Q12 暴行・恐喝の類のいじめは、学校ではなく警察に訴えるべきという意見もありますが、あなたはどのように思われますか。

横:子どもの学齢(子どもが複数いる場合は、一番下の子どもの学齢)

「暴力絡みのいじめは、いじめる側の家庭に問題の根っこがあるケースが多い。その場合は学校教育の問題ではなくなっているので、警察などの介入が必要です。親に圧力をかける必要があると思います」などの意見が書き込まれた。 一方、ラボの投票では「反対」が2割5分と、保護者アンケートより高い数字が出た。「暴力的イジメをする子どもの背景に切り込んで指導しないと、その子どもを排除するだけで終わってしまい、暴力を肯定する大人になって、ドメスティックバイオレンス加害者になってしまう。 ただ、学校が、加害生徒の背景に切り込む気概と能力を持っていないと判断したら、見切りをつけて、警察に行くべきだ」「警察に連絡したところで、どの程度本気で対応するだろうか? 例えば教育委員会など警察よりも抑止力のある組織への連絡パイプラインが必要なのではないか」など反対理由を積極的にコメントする人も多かった。

◇なんかかんだ言っても頼りにされている先生と学校

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横:Q7 もしも、あなたの子どもがいじめられていると知ったらどうすると思いますか。 あなたの子どもがいじめられていると想定して答えてください。
横:子どもの学齢(子どもが複数いる場合は、一番下の子どもの学齢)

 アンケート調査で「いじめは防げる問題だと思うか」との質問には、3割が「防げると思う」と回答した一方、「防げないと思う」との回答が4割を超えた。また、我が子がいじめられていることを知った際、どこに相談するかの質問には、「学校の先生相談する」が8割(82.3%)を超えていた。前出の笠原氏は、「生徒が自殺した場合、事実をすぐに公表し、原因究明してほしい」との回答が7割を超えたことと併せ、「学校や教師は、なんだかんだいっても頼りにされていることに自覚的にならなくてはいけない。保護者のまっとうな願いに応えられる教育を行う責務がある」と求めた。【鷲頭彰子】

※アンケート調査の実施概要
【調査対象者】未就学児から高校生までの子供を持つ親 1,019名
【実施期間】2018年3月26日~28日
【調査方法】リサーチ会社インテージ社が保有するモニターの中から上記の子供を持つ親に絞り、WEBで回答いただきました。

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